脂質値の真実:定義の恣意性と健康への本質的アプローチ
医学の世界では「脂質異常症」という診断名が広く使われているが、「異常」とは誰がどのように定義したものなのか? なぜ基準値は時代とともに下がり続け、より多くの人々が「病気」のレッテルを貼られるようになったのか? 本シリーズでは、脂質をめぐる医学的知見と同時に、その背後にある経済的利害関係、制度的問題、そして科学的エビデンスの批判的検証を通じて、真に健康のために考えるべき視点を提示する。
第1部:脂質と数値の基本理解
コレステロールやトリグリセリドといった脂質の分子的意義から測定値の実際の解釈まで、基本を押さえつつも見落とされがちな視点を提供する。リポタンパク質の機能的理解や検査値の日内変動・季節変動など、教科書には書かれていない実践的知識を網羅的に解説する。

第2部:「異常」定義の恣意性と歴史的経緯
診断基準がなぜ下がり続けるのか、製薬産業と診断ガイドラインの関係性、国際比較から見える基準値の矛盾など、「異常」という概念自体の恣意性と歴史的背景を掘り下げる。健常者における「異常値」の頻度や、リスク評価における相対リスクと絶対リスクの混同問題も詳述する。

第3部:因果関係の批判的検証
脂質値と心疾患の関係は本当に因果関係なのか、それとも単なる相関にすぎないのか。未公開データや出版バイアス、交絡因子の問題など、研究結果の解釈に潜む盲点を明らかにする。コホート研究の限界やエビデンスレベルの階層から、何を信頼すべきかを考察する。

第4部:医療制度と脂質異常症治療の問題構造
健康診断制度と数値管理主義の限界、処方インセンティブと診療報酬制度の歪み、ガイドライン作成委員会の利益相反など、医療システムの構造的問題を解剖する。病気概念の拡大と医療化、「予防医学」の名の下での過剰医療など、制度的視点から脂質管理を再考する。

第5部:多面的健康評価と代謝状態の本質
単一指標から複合評価への転換、栄養素応答の個人差、炎症指標と脂質値の関連性など、脂質値だけでは捉えきれない健康の多面性を探究する。運動効果の分子機構や環境変化への対応力としての代謝適応能など、より本質的な健康指標を提案する。

第6部:診療現場と患者の間の情報格差
統計的理解の難しさ、副作用情報の伝達問題、生活習慣改善の実効性など、診療現場と患者の間に存在する情報格差の問題を明らかにする。薬物療法の真の適応基準や、患者が知るべき選択肢と情報について具体的に論じる。

第7部:脂質と健康の関係性再構築
年齢別・状況別の最適値、食事脂質と血中脂質の関係、進化的視点からの脂質代謝の意義など、脂質と健康の関係を新たな視点から再構築する。全身の代謝ネットワークという視点や、検査値ではなく個人の状態に合わせたアプローチの可能性を探る。

本シリーズは、脂質異常症をめぐる通説や診断基準を無批判に受け入れるのではなく、科学的エビデンスと社会的文脈の両面から批判的に検証し、真に健康に資する知識と視点を提供することを目指す。医学的正確さを損なうことなく、現代医療における「脂質管理」の盲点と可能性を明らかにすることで、読者一人ひとりが自らの健康について、より深く、より主体的に考えるための基盤を提供したい。
補足:次の記事は、実際に私の3年間の健康診断のデータを用いて、医師からのラベリングにのみ依存しない、自分自身の体に対する別角度からの視点を与える参考的記事である。
全7部を制覇した人にはぜひ読んでみてほしい。
