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デュアルコーディングで記憶力40%向上!画像×言語の力

第7部:認知的限界を突破する実践的訓練法:言語習得の認知科学的最適化

あなたの脳はどのようにして言語を学び、そして「忘れる」のだろうか。言語学習における壁—「3単語の壁」や「B2の壁」など—はどのようにすれば効果的に突破できるのだろうか。これまでの章では、言語処理の認知的基盤から多言語話者の脳の特性まで、言語習得における様々な側面を検討してきた。本章では、これらの理論的理解を実践に移す段階として、言語処理の認知的限界を拡張するための科学的に裏付けられた訓練法に焦点を当てる。認知科学、教育心理学、神経言語学の最新知見を統合し、各言語スキル向上のための具体的エクササイズと学習戦略を提案する。これらの方法論は、単なる経験則や直観ではなく、実証研究によって検証された原理に基づくものである。言語習得の認知的最適化を目指す意欲的学習者にとって、科学的根拠に基づいた実践的指針となるだろう。

I. 学習と記憶の科学:分散学習の原理

「昨日覚えた単語を今日もう忘れている」—多くの言語学習者が経験するこの現象は、脳の基本的な記憶メカニズムに起因している。効果的な言語学習法を設計するためには、まず人間の学習と記憶の基本原理を理解する必要がある。

学習心理学の歴史において最も影響力のある発見の一つが、Ebbinghaus(1885)の「忘却曲線」(forgetting curve)である。自身を被験者として膨大な記憶実験を行ったEbbinghausは、新しく学んだ情報の保持率が時間とともに予測可能なパターンで低下することを発見した。具体的には、学習した情報の約70%が24時間以内に忘却され、その後忘却率は緩やかに減少するという指数関数的パターンである。この洞察は、単に一度学ぶだけでは効果的な学習にならないことを科学的に示している。

この忘却の問題に対する最も効果的な解決策が「分散学習」(spaced repetition)である。Ebbinghausの先駆的実験から、Cepeda et al.(2008)の包括的メタ分析まで、学習セッションを時間的に分散させることの有効性は一貫して支持されてきた。Cepedaらの研究は、学習材料と保持期間の広範な範囲にわたる317の実験データを分析し、分散学習が集中学習(一度にまとめて学ぶ方法)よりも平均で50-154%効果的であることを示した。特に注目すべきは、理想的な学習間隔が保持したい期間の10-20%であるという発見である。例えば、1か月後も記憶に留めたい場合は3-6日の間隔で復習するのが最も効果的というわけだ。

分散学習の実践的応用として特に重要なのが、Leitner(1972)が開発した「ライトナーシステム」である。このシステムでは、学習項目(通常は単語カード)が複数のボックスに分類され、各項目の想起成功率に基づいて異なる間隔で復習される。具体的には、容易に想起できる項目は長い間隔で、困難な項目は短い間隔で復習するという「適応的間隔」を特徴とする。このアプローチは現代では「間隔反復ソフトウェア」(spaced repetition software: SRS)として進化し、Anki、Memrise、SuperMemoなどのアプリケーションに実装されている。

分散学習の神経科学的基盤については、Karlsson Wirebring et al.(2015)のfMRI研究が重要な知見を提供している。彼らの実験では、分散学習セッションと集中学習セッションの脳活動パターンを比較した結果、分散学習では海馬と前頭前皮質の間のネットワーク活性化が増加し、これが長期記憶形成の強化につながることが示された。特に興味深いのは、分散学習が「記憶の固定化」(memory consolidation)プロセスに特有の神経回路を活性化させる点である。

分散学習の最適間隔については、異なる理論的モデルが提案されている。Bjork & Bjork(1992)の「新理論」(New Theory)は、各記憶項目が「検索強度」(retrieval strength: 現時点での想起容易性)と「保存強度」(storage strength: 長期的保持の強さ)という二つの特性を持つと主張する。彼らのモデルによれば、最適な学習は項目の検索が「望ましい困難」(desirable difficulty)を伴う時点、すなわち検索がやや困難だが可能なタイミングで行われる。この理論に基づけば、過度に容易な復習(間隔が短すぎる)も過度に困難な復習(間隔が長すぎる)も最適ではないということになる。

この「望ましい困難」の概念は、Benjamin & Tullis(2010)の実験研究によって支持されている。彼らは様々な間隔での学習効果を比較し、約80%の想起成功率をもたらす間隔が長期記憶形成に最も効果的であることを示した。これは、完全な成功(100%)も完全な失敗(0%)も最適学習をもたらさないという、一見逆説的な結論である。

分散学習の効果を最大化するためには、「変動練習」(variable practice)の原理も重要である。Carpenter & Mueller(2013)の研究によれば、同一材料を異なる文脈や形式で復習することで、より柔軟で検索可能な記憶表象が形成される。例えば、同じ語彙項目を音声認識、読解、作文など異なるモダリティで練習することで、単一モダリティでの反復よりも強固な記憶が形成されることが示されている。

分散学習に対する批判的視点としては、Küpper-Tetzel & Erdfelder(2012)の研究が挙げられる。彼らは「コンテキスト変動理論」(context variation theory)の立場から、分散学習の効果は単なる時間間隔ではなく、各学習セッションの文脈的相違に起因する可能性を指摘している。この視点によれば、物理的環境、精神状態、学習方法などの文脈的要素が多様であるほど、学習効果が高まるというわけだ。

最新のアプローチとして注目されるのが、Metzler-Baddeley & Baddeley(2009)の「文脈依存的分散学習」(context-dependent spaced learning)である。この方法では、各学習セッションの文脈(場所、時間帯、学習方法など)を意図的に変化させつつ、最適な時間間隔を維持するという二重の最適化を図る。彼らの実験によれば、この方法は特に実生活での応用場面での記憶保持を向上させる効果がある。

分散学習を言語学習に具体的に応用する方法として、Nation(2013)は以下の「多段階反復スケジュール」を提案している:

  1. 初回学習の10分後に第1回復習
  2. 1日後に第2回復習
  3. 1週間後に第3回復習
  4. 1か月後に第4回復習
  5. 3か月後に第5回復習

このスケジュールは、忘却曲線の形状に合わせて設計されており、各復習のタイミングが記憶が約80%まで減衰した時点に相当する。これは前述の「望ましい困難」レベルに一致している。

応用言語学の観点からは、Nakata(2015)の研究が分散学習の効果を語彙習得に特化して検証している。日本人英語学習者を対象とした彼の実験では、同一合計時間の学習でも、7日間に分散した語彙学習が1日に集中した学習よりも約35%高い保持率をもたらすことが示された。特に注目すべきは、この優位性が初期学習から4週間後のテストでより顕著になったという点である。

II. 多感覚統合と記憶定着:デュアルコーディング理論の応用

人間の脳はどのようにして情報を符号化し、保持するのだろうか。そして、複数の感覚モダリティを活用することで、言語学習の効率はどのように高まるのだろうか。

これらの問いを理解する上で中心的な理論的枠組みが、Paivio(1971, 2007)の「デュアルコーディング理論」(Dual Coding Theory: DCT)である。この理論の基本的前提は、人間の認知システムが言語的情報と非言語的(視覚的)情報を別個かつ相互連結したシステムで処理するというものである。重要なのは、この二つのシステムが加算的な効果を持つという点だ。つまり、情報が両方のシステムで符号化されれば、単一システムでの符号化よりも想起可能性が高まる。

この理論を言語学習に適用すると、語彙項目を言葉(発音、スペル、定義など)と画像の両方で提示することで、記憶定着率が向上するという予測が導かれる。実際、Shen(2010)の実験研究では、英単語を視覚的イメージと併せて学習した学生グループは、単語のみで学習したグループよりも20-30%高い保持率を示した。特に興味深いのは、この効果が学習者の母語背景や熟達度レベルにかかわらず一貫していた点である。

デュアルコーディングの効果は単なる記憶向上にとどまらない。Mayer & Moreno(2003)の「マルチメディア学習の認知理論」(Cognitive Theory of Multimedia Learning)によれば、適切に設計された多感覚入力は理解の深さと転移可能性も高める。彼らの実験では、言語説明と視覚的図解を組み合わせて提示された文法規則は、単一モダリティで提示された場合よりも、新規文脈での適用能力が約25%高かった。

多感覚統合の神経科学的基盤については、Shams & Seitz(2008)の研究が重要な知見を提供している。彼らのレビューによれば、人間の脳は本質的に「多感覚的」であり、単一感覚による学習よりも多感覚統合による学習の方が、より広範な神経ネットワークの活性化をもたらす。特に、視覚・聴覚・運動感覚の統合は、異種感覚間結合(cross-modal binding)を促進し、より堅牢な記憶表象の形成につながる。

デュアルコーディング理論を言語学習に具体的に応用した例として、Mayer et al.(2014)の「画像強化語彙学習法」(imagery-enhanced vocabulary learning)がある。この方法では、以下の7段階のプロセスを経る:

  1. 単語の発音とスペルの提示
  2. 具体的なイメージ(写真または絵)の提示
  3. 学習者による個人的イメージの生成
  4. 意味とイメージの明示的連結
  5. 例文中での単語の提示
  6. 文脈内での意味推測練習
  7. イメージ想起を伴う想起練習

Mayerらの実験によれば、この方法は特に具象語の学習において顕著な効果を示し、従来の言語のみによる学習法と比較して約40%の記憶向上をもたらした。

抽象語のデュアルコーディングについては、特別な考慮が必要である。Paivio自身が指摘するように、抽象概念は本質的に具体的イメージに変換しにくい。この問題に対し、Boers et al.(2008)は「概念メタファー理論」(Conceptual Metaphor Theory)に基づく解決策を提案している。彼らのアプローチでは、抽象概念の基盤となる身体的経験や具体的メタファーを視覚化する。例えば、「inflation」(インフレーション)という経済用語に対しては、膨らむ風船のイメージを連想させるといった具合だ。彼らの実験によれば、このアプローチは抽象語の記憶保持率を約25%向上させた。

多感覚統合学習に対する批判的視点として、Kalyuga & Sweller(2014)の「認知負荷理論」(Cognitive Load Theory)からの指摘がある。彼らは、熟達度の低い学習者にとっては多感覚入力が認知的過負荷を招く可能性を警告している。彼らの実験では、初級学習者は多感覚提示よりも段階的な単一モダリティ提示の方が効果的な場合があることが示されている。これは「専門性逆転効果」(expertise reversal effect)と呼ばれる現象である。

この問題に対処するためのアプローチとして、Plass et al.(2010)は「適応的マルチメディア学習」(adaptive multimedia learning)を提案している。この方法では、学習者の熟達度や認知スタイルに応じて多感覚入力の複雑性を調整する。例えば、初級者には基本的な文字と画像の組み合わせを提供し、熟達度が向上するにつれてオーディオ、アニメーション、インタラクティブ要素などを段階的に追加していく。

多感覚統合のもう一つの重要な側面は「身体化認知」(embodied cognition)の概念である。Barsalou(2008)によれば、概念理解は抽象的な象徴操作ではなく、感覚運動経験のシミュレーションに根ざしている。これを言語学習に適用したのがMacedonia & Knösche(2011)の「ジェスチャー強化学習法」(gesture-enhanced learning)である。彼らの研究では、新しい語彙を学ぶ際に関連ジェスチャーを併用することで、音声・視覚のみの学習よりも約33%高い保持率が達成された。特に注目すべきは、この効果が時間経過とともに増大する点である。学習から6ヶ月後のテストでは、ジェスチャー併用群の優位性が最大に達した。

外国語学習におけるデュアルコーディングの実践的応用として、Webb & Nation(2017)は「画像語彙ノート法」(pictorial vocabulary notebook method)を提案している。この方法では、学習者が以下の要素を含む個別化された語彙ノートを作成する:

  1. 目標単語(発音記号付き)
  2. 関連する画像または図解(可能な限り学習者自身が描く)
  3. 文脈内での使用例(例文)
  4. 意味的・形態的関連語(同義語、反義語、派生語など)
  5. 個人的関連付け(その単語と自身の経験の接点)

Webbらの追跡研究によれば、このノート法を8週間実践した学習者は、従来の言語のみのノート法を使用した学習者よりも約30%高い語彙保持率を示した。

多感覚統合の最新アプローチとして、Johnson & Papafragou(2016)の「マルチモーダル統合訓練」(multimodal integration training)が注目される。この方法は、情報を単に複数のモダリティで提示するだけでなく、モダリティ間の「積極的統合」を促進するよう設計されている。具体的には、視覚情報と聴覚情報の相違点や一致点を意識的に注目させる課題や、あるモダリティから別のモダリティへの「変換タスク」(聞いた内容を絵に描く、画像を言葉で説明するなど)が含まれる。彼らの実験によれば、このアプローチは特に抽象概念の理解と保持に有効であることが示されている。

III. 深層処理と精緻化:意味的連結の強化

情報をどのように処理するかが、その記憶定着度を左右する—これがCraik & Lockhart(1972)の「処理水準理論」(Levels of Processing Theory)の中核的主張である。彼らによれば、記憶の強さは符号化時の処理の「深さ」に依存する。表層的な処理(視覚的特徴や音韻的特徴への注目)は弱い記憶痕跡をもたらすのに対し、深層的な処理(意味的関連性や個人的関連性の分析)はより強固な記憶を形成する。

この理論を言語学習に適用すると、単なる反復や暗記よりも、意味的連結や精緻化を伴う学習方法の方が効果的であるという予測が導かれる。実際、Craik & Tulving(1975)の古典的実験では、単語の綴りや音に注目する表層処理よりも、その単語の意味や文脈的使用に注目する深層処理の方が、最大50%高い記憶保持率をもたらすことが示された。

言語学習における深層処理を促進する効果的な技法の一つが「精緻化」(elaboration)である。これは学習項目に追加的な意味的豊かさを与えるプロセスである。Webb(2005)の「文脈内語彙学習法」はその代表的応用例である。この方法では、単に単語とその訳語を覚えるのではなく、その単語を含む文脈を分析し、関連概念との意味的ネットワークを構築する。Webbの実験によれば、文脈内で語彙を学習した群は、単語リストで学習した群よりも約30%高い保持率と、より正確な使用能力を示した。

深層処理の強化方法としてさらに進んだアプローチがJoe(1998)の「生成的処理タスク」(generative processing tasks)である。これは学習者が情報を単に受容するのではなく、積極的に「生成」または「変換」することを要求するタスクである。具体的には:

  1. パラフレーズ(言い換え) 2.要約
  2. アナロジー生成(類似例の創出)
  3. 教師役割(他者への説明)
  4. 情報の視覚化

Joeの研究によれば、これらの生成的タスクを通じて学習した語彙は、単なる反復暗記と比較して約40%高い長期保持率を示した。特に注目すべきは、生成的処理が単なる認識能力だけでなく、産出能力も大幅に向上させた点である。

深層処理の神経科学的基盤については、Schacter & Wagner(1999)のfMRI研究が重要な知見を提供している。彼らの実験によれば、深層的な意味処理は左前頭前皮質と海馬の間の神経結合を強化し、これが長期記憶形成の効率を高める。対照的に、表層的な音韻処理は主に左下前頭回のみを活性化させ、海馬との結合は比較的弱い。

深層処理を促進する具体的な教授法として、Hulstijn & Laufer(2001)は「関与負荷仮説」(Involvement Load Hypothesis)に基づく学習タスクを提案している。この仮説によれば、語彙学習の効果は以下の三つの要素の「関与負荷」の総和によって決まる:

  1. 必要性(その単語を知る必要性)
  2. 探索(意味や用法を自ら探す程度)
  3. 評価(その単語の適切性を判断する程度)

これらの要素の負荷が高いほど、記憶定着効果が高まる。彼らの実験では、関与負荷の高いタスク(例:与えられた単語を使って創作的な文章を書く)が、負荷の低いタスク(例:その単語の意味をチェックする)よりも約50%高い記憶保持率をもたらすことが示された。

深層処理と関連する重要な概念が「間隙産出仮説」(Output Hypothesis)である。Swain(2005)によれば、言語の産出(話すこと、書くこと)は単なる言語知識の「使用」ではなく、知識の「構築」に不可欠なプロセスである。産出の過程で学習者は知識の間隙に気づき、より深い処理を迫られる。Swainの研究によれば、受容的活動(読む、聞く)のみの学習者と比較して、産出活動を含む学習者は文法規則の長期保持において約40%優れていた。

言語学習における個人的関連性の重要性も、深層処理の観点から理解できる。Stevick(1996)の「記憶のイメージ理論」(Image Theory of Memory)によれば、情報が長期記憶に統合される度合いは、それが学習者の「自己」とどれだけ関連しているかに依存する。このアプローチを応用したのがCampbell & Larson(2012)の「個人化語彙学習法」(personalized vocabulary learning)である。この方法では、以下のステップに従って新しい語彙を学習する:

  1. 単語の基本的意味と形式の確認
  2. その単語と個人的経験の接点の探索
  3. 個人的な例文や状況の創出
  4. 情動的反応や評価の付加

Campbellらの研究によれば、この方法は特に抽象語や低頻度語の記憶において効果的で、従来の言語のみの学習法と比較して約35%高い保持率をもたらした。

深層処理の概念に対する批判的視点としては、Morris et al.(1977)の「転移適切処理」(transfer-appropriate processing)理論がある。彼らの立場によれば、記憶の効率性は単に処理の「深さ」ではなく、学習時の処理と検索時の処理の「一致度」によって決まる。つまり、後で聴解で使用する語彙は聴解タスクで学ぶのが最も効果的であり、書く際に使用する語彙は書くタスクで学ぶのが効果的という考え方である。彼らの実験では、処理深度よりも処理タイプの一致度の方が、特定のパフォーマンス予測において優れていた。

この観点からは、Lightbown(2008)の「タスク特異的訓練」(task-specific training)が注目される。このアプローチでは、言語項目の最終的な使用目的に合わせた学習活動を設計する。例えば、会話で使用する表現は対話タスクで、読解で必要な語彙は読解活動の中で学ぶといった具合だ。Lightbownの追跡研究によれば、このアプローチは特に言語知識の「使用可能性」(availability)において優れた成果を示した。

特に高度な言語熟達を目指す学習者にとって重要なのが、Oxford & Scarcella(1994)の「分析的深層処理」(analytical deep processing)である。このアプローチでは、言語項目を単に記憶するだけでなく、その構造的特徴や言語学的関連性を分析的に理解する。例えば、語源分析、形態素分析、コロケーション分析などの技法が含まれる。彼らの研究によれば、このような分析的アプローチは特にCEFR B2レベル以上の学習者の語彙拡張において効果的であることが示されている。

深層処理と精緻化の最新アプローチとして、Barcroft(2015)の「戦略的語彙習得モデル」(Strategic Vocabulary Learning Model)が注目される。このモデルは、意味処理、形式処理、形式-意味マッピングのバランスを図りながら、学習段階に応じた最適な処理戦略を選択するというものである。初期段階では形式への注目を優先し、それが安定した後に意味的精緻化に移行するという、処理リソースの効率的配分を重視するアプローチである。Barcroftの実験によれば、このバランスのとれたアプローチは、純粋な深層意味処理よりも総合的な語彙習得において優れた結果をもたらした。

IV. 言語スキル別実践訓練法:科学的アプローチ

これまで検討してきた認知的原理(分散学習、多感覚統合、深層処理)は、具体的にどのように言語スキル向上に応用できるだろうか。ここでは、主要言語スキル(語彙、文法、読解、聴解、発話)ごとに、科学的に裏付けられた訓練法を提案する。

語彙習得の最適化

語彙習得は外国語学習の核心と言える。科学的に最適化された語彙学習の統合的アプローチとして、Nation(2013)の「多層的語彙習得」(multi-faceted vocabulary acquisition)が注目される。このアプローチは以下の要素で構成される:

  1. 意図的・付随的学習のバランス:Nation(2001)の研究によれば、初級段階(約2,000語レベルまで)では意図的学習が効率的だが、それ以降は読解などを通じた付随的学習との併用が効果的である。具体的には、高頻度語は意図的学習、中頻度語は両方の組み合わせ、低頻度語は主に付随的学習という使い分けが推奨される。
  2. 分散反復スケジュール:Nakata(2015)の研究に基づき、以下の間隔で反復することで最適な保持効果が得られる:
    • 1日目:初回学習 + 30分後に復習
    • 2日目:復習
    • 4日目:復習
    • 8日目:復習
    • 15日目:復習
    • 30日目:復習
  3. 単語カード法の精緻化:Schmitt & Schmitt(1995)は、伝統的な単語カードを以下の要素で強化することを提案している:
    • 表面:目標語と発音記号
    • 裏面:訳語/定義 + 例文 + コロケーション + 派生語 + 関連語
  4. 語彙ネットワーク構築:Wolter(2006)の「語彙ネットワークモデル」によれば、個々の単語を孤立して学ぶのではなく、意味的・形態的に関連する語彙の「ネットワーク」として学ぶことが効果的である。例えば、同じ話題に関連する語彙(トピック関連語彙)や同じ接頭辞・接尾辞を持つ語群をまとめて学習する。
  5. 検索練習の強化:Barcroft(2007)の研究によれば、単語を単に見て覚えるよりも、積極的に「検索」する練習(例:フラッシュカードの表を見て裏面の内容を想起する)の方が長期記憶形成に効果的である。特に、部分的な手がかり(単語の最初の文字や画像の一部など)からの検索練習が記憶強化に有効である。

語彙習得における最新の科学的アプローチとして、Webb et al.(2013)の「語彙習得頻度閾値」(vocabulary acquisition frequency threshold)研究も重要である。彼らの実験によれば、新しい単語が確実に習得されるためには、異なる文脈で少なくとも10-12回の有意味な接触が必要であることが示されている。これに基づき、彼らは「漸進的テキスト接触」(graded text encounter)という方法を提案している。これは、新出語彙が複数のテキストに計画的に分散配置され、徐々に異なる文脈で遭遇できるよう設計された読解プログラムである。

文法習得の認知的最適化

文法習得においては、明示的学習と暗示的学習のバランスが特に重要である。この点について、Ellis(2006)の「認知言語学的アプローチ」(cognitive linguistic approach)は以下の統合的手法を提案している:

  1. 明示的ルール説明と例示:DeKeyser(2007)の研究によれば、複雑な文法規則は明示的説明と典型的例の組み合わせで提示すると最も効果的に習得される。特に、ルールの「なぜ」(機能的・意味的根拠)まで理解することが重要である。
  2. 意識高揚活動(consciousness-raising activities):Fotos(2002)の研究に基づく手法で、学習者が具体例から帰納的にパターンを発見し、明示的ルールに到達するプロセスを促進する。例えば、特定の文法構造を含む複数の例文を比較し、共通パターンを発見するタスクなどが含まれる。
  3. 構造化インプット(structured input):VanPatten(2004)の「処理指導」(Processing Instruction)に基づく手法で、学習者の注意を特定の文法形式に向けさせるよう設計されたインプットを提供する。これには「参照質問」(referential questions:正しい答えがある質問)と「感情質問」(affective questions:個人的見解を問う質問)の組み合わせが含まれる。
  4. 出力強化活動:Swain(2005)の研究に基づき、学習した文法構造を様々な文脈で実際に産出する機会を提供する。特に効果的なのは、Izumi(2002)の「再構築タスク」(reconstruction tasks)で、これは学習者がテキストを読んだ後、それを記憶から再構築するという活動である。

文法習得における神経言語学的知見として特に重要なのが、Ullman(2004)の「宣言的/手続的モデル」(Declarative/Procedural Model)である。このモデルによれば、初期段階の文法学習は主に宣言的記憶(意識的に想起可能な事実的知識)に依存するのに対し、熟達化に伴い手続的記憶(自動的に実行される技能的知識)への移行が進む。このモデルに基づき、DeKeyser(2007)は以下の三段階の文法訓練法を提案している:

  1. 宣言的段階:明示的ルール学習と理解練習
  2. 手続き化段階:制御された産出練習(特定構造に焦点化)
  3. 自動化段階:流暢性向上のための多様な文脈での使用

文法習得の最新アプローチとして注目されるのが、Larsen-Freeman(2015)の「複雑適応システムとしての文法」(grammar as a complex adaptive system)である。この視点では、文法は静的なルール集合ではなく、使用文脈に応じて進化する動的なシステムとして捉えられる。これに基づく「用法基盤文法学習」(usage-based grammar learning)は、以下の原則に従う:

  1. 実際の言語使用にしっかりと位置づけられた文法項目の提示
  2. 形式と機能(意味・用法)の明示的連結
  3. パターン認識力の開発(例えば、コーパスデータでのパターン観察)
  4. バリエーションへの敏感さの育成(同一構造の多様な実現形の比較)

この方法の効果を検証したEllis & Wulff(2015)の研究によれば、用法基盤アプローチで学習した文法項目は、特に実際のコミュニケーション場面での適切な使用能力において優位性を示した。

読解力向上の認知科学的アプローチ

読解は複雑な認知プロセスであり、語彙認識から談話理解まで多層的なスキルを要する。Grabe & Stoller(2011)の「処理効率化モデル」(processing efficiency model)に基づく統合的読解訓練には以下の要素が含まれる:

  1. 自動的単語認識の強化:Perfetti(2007)の「言語効率性理論」(Verbal Efficiency Theory)によれば、単語認識の自動化は読解熟達度の最重要予測因子である。これを強化するためのテクニックとして以下が有効である:
    • 繰り返し速読(repeated timed reading)
    • 単語認識フラッシュカード(単語を瞬間的に認識する訓練)
    • コロケーション認識訓練(頻出の語句のまとまりを単位として認識)
  2. 作業記憶容量の拡張:Walter(2004)の研究によれば、L2読解における主要なボトルネックの一つが作業記憶制約である。これを改善するための訓練法として以下が効果的である:
    • テキスト再生訓練(読んだ内容を記憶から再生)
    • 段落要約訓練(各段落の要点をまとめる)
    • 読解スパン課題(読解しながら特定情報を保持する)
  3. 背景知識の活性化:McNamara et al.(2007)の研究によれば、適切な背景知識の活性化は読解理解度を30%以上向上させる可能性がある。効果的な活性化技術としては以下が含まれる:
    • 読解前質問(pre-reading questions)
    • 予測活動(prediction activities)
    • 意味マップ作成(semantic mapping)
  4. メタ認知戦略の開発:Carrell et al.(2010)によれば、効果的な読み手は一連のメタ認知戦略を柔軟に活用する。これには以下が含まれる:
    • 目的設定(reading purpose setting)
    • 予測と確認(predicting and confirming)
    • クエスチョニング(self-questioning)
    • モニタリングと修正(monitoring and fix-up)

読解力向上のための最新アプローチとして、Zhang(2018)の「ディスコース構造分析訓練」(discourse structure analysis training)が注目される。この方法は、テキストの全体的構造とその標識(接続詞、談話標識など)への意識的注目を促進する。Zhangの実験によれば、8週間のこの訓練を受けた学習者は、一般的読解練習を行った対照群と比較して、特に長文の統合的理解において約26%高いスコアを示した。

聴解能力向上の実践的アプローチ

聴解は言語スキルの中でも特有の認知的挑戦—音声言語の一過性、話速制約、音韻認識など—をもたらす。これらの制約を克服するための科学的アプローチとして、Vandergrift & Goh(2012)の「メタ認知的聴解訓練」(metacognitive listening instruction)が広く支持されている。このアプローチは以下の要素で構成される:

  1. プランニング段階:聴解前に目的を明確化し、背景知識を活性化する。
    • タスク分析(何を聞き取る必要があるか)
    • 予測活動(内容や語彙の予測)
    • 選択的注意の準備(特定の情報に注目)
  2. モニタリング段階:聴解中に理解を継続的に評価する。
    • 予測の検証(予測内容と実際の内容の比較)
    • 理解困難点の特定(わからない部分の認識)
    • 推測による補完(文脈からの意味推測)
  3. 評価・問題解決段階:聴解後に理解度を評価し、戦略を調整する。
    • 理解度の自己評価
    • 理解困難の原因分析
    • 戦略の有効性評価

Vandergriftらの研究によれば、このメタ認知的アプローチは、特に上級レベル(CEFR B2-C1)への移行において効果的であることが示されている。

聴解の認知的制約に特化した訓練法として、Field(2008)の「ボトムアップ処理強化」(bottom-up processing enhancement)も重要である。これは以下の要素を含む:

  1. 音韻識別訓練:最小対立ペア(minimal pairs)の識別練習や、母語にない音素対立の集中訓練。
  2. 単語境界認識訓練:連続音声から単語を切り出す能力の強化。例えば、音声を聞きながら単語間にスラッシュを入れるといった活動。
  3. プロソディパターン認識:イントネーション、強勢、リズムパターンへの敏感さを高める訓練。例えば、文のリズムをタッピングで表現するなど。
  4. 縮約形と同化現象の認識訓練:自然会話に頻出する音声変化(”going to” → “gonna”など)の識別練習。

Fieldの研究によれば、これらのボトムアップ訓練は特に初級から中級(CEFR A2-B1)への移行で効果的であることが示されている。

聴解訓練の最新アプローチとして、Yeldham(2018)の「統合的アプローチ」(integrated approach)が注目される。これはボトムアップ処理とトップダウン処理の統合的強化を図るもので、以下の要素で構成される:

  1. キーワード認識訓練:文意を左右する重要語句の識別能力強化
  2. 言語チャンク処理:フレーズ単位での理解を促進
  3. スキーマ活性化:背景知識の効果的活用
  4. 二重処理タスク:ボトムアップとトップダウン処理の同時実行練習

Yeldhamの実験によれば、この統合的アプローチは、どちらか一方に焦点を当てたアプローチよりも、特に「現実的聴解環境」(背景騒音がある、様々な話者が登場するなど)での理解力向上において優れた効果を示した。

発話能力向上の科学的アプローチ

発話能力は、概念形成から調音までの複雑なプロセスであり、これを最適化するためには多面的アプローチが必要である。Segalowitz(2010)の「認知的流暢性モデル」(cognitive fluency model)に基づく統合的訓練法には以下の要素が含まれる:

  1. 概念化訓練:Levelt(1989)のモデルによれば、発話の第一段階は「何を言うか」の計画である。この能力を強化するための訓練としては以下が効果的である:
    • 内容組織化訓練(トピックの主要点を構造化)
    • 計画時間の漸進的短縮(徐々に即時性を高める)
    • マインドマッピング技術(アイデアの視覚的組織化)
  2. 形式化訓練:次のステップは言語形式(語彙・文法)への変換である。この段階の最適化には以下が有効である:
    • 定型表現(formulaic sequences)の集中学習
    • コロケーションの自動化訓練
    • 構文フレームの流暢性練習
  3. 発音・プロソディ訓練:調音段階の最適化には以下のアプローチが効果的である:
    • シャドーイング(native speakerの発話をリアルタイムで模倣)
    • プロソディマーキング(音声の韻律的特徴を視覚化して練習)
    • 録音フィードバック(自己発話の録音と分析)
  4. 自己モニタリング訓練:発話の質を高めるための監視能力強化には以下が含まれる:
    • エラー識別訓練(録音した発話からエラーを見つける)
    • 修正方略の開発(エラーを効果的に修正する技術)
    • バランス感覚の養成(流暢性と正確性のバランス)

発話能力向上のための特に効果的なテクニックとして、Nation & Newton(2008)の「4/3/2テクニック」がある。これは同じ内容のスピーチを、最初は4分、次に3分、最後に2分で行うというものである。話す時間が短縮されることで、よりコンパクトで流暢な発話が促進される。彼らの研究によれば、この活動を定期的に行うことで、一般的な発話流暢性(1分あたりの語数、ポーズの頻度など)が有意に向上することが示されている。

発話能力の最新アプローチとして、Wood(2010)の「流暢性養成訓練」(fluency development training)が注目される。これは以下のサイクルで構成される4週間プログラムである:

  1. モデル対話の聴解と分析(特に定型表現に注目)
  2. 類似トピックでの即興対話練習
  3. 対話の録音と転写
  4. 転写の分析とフィードバック
  5. 定型表現と流暢性要素の明示的練習
  6. 改善版対話の録音

Woodの追跡研究によれば、このプログラムを完了した学習者は、特に「平均発話長」(mean length of runs: ポーズ間の語数)において約40%の向上を示し、この効果は3ヶ月後のフォローアップ調査でも維持されていた。

V. 神経可塑性を最適化する学習環境デザイン

言語学習は脳の「ハードウェア」そのものを変化させるプロセスである。神経科学の最新知見をふまえ、神経可塑性(neuroplasticity: 神経系の構造的・機能的変化能力)を最大化する学習環境をどのようにデザインすればよいだろうか。

神経可塑性の理解において画期的だったのが、Maguire et al.(2000)のロンドンタクシー運転手研究である。ロンドンの地図を数年にわたって学習する過程で、タクシー運転手の海馬(特に後部)の灰白質容量が増加することが示された。この発見は、集中的な学習が成人脳の物理的構造を変化させうることを示す説得力ある証拠となった。

この知見を言語学習に応用するならば、Li et al.(2014)の「構造化言語環境」(structured language environment)アプローチが注目に値する。彼らのモデルによれば、言語習得のための最適な神経可塑性は以下の条件で促進される:

  1. 最適な入力分布:Kuhl(2010)の研究に基づき、言語刺激が「統計的に最適」な分布で提示されること。具体的には、頻度、複雑性、変動性の適切なバランスが重要である。過度に単調な入力も、過度に多様な入力も非効率的である。
  2. 多感覚統合環境:Shams & Seitz(2008)によれば、複数の感覚モダリティ(視覚、聴覚、運動感覚など)の統合が神経ネットワークの発達を促進する。これは前述のデュアルコーディング理論とも一致する。
  3. 集中的・分散的学習の最適バランス:Metcalfe & Xu(2016)の「非線形学習モデル」によれば、短期間の集中的学習と、長期間の分散的学習の組み合わせが最も効果的である。具体的には、初期段階での数日間の集中学習の後、数週間にわたる分散学習が神経可塑性を最大化する。
  4. 報酬系の活性化:Ripollés et al.(2016)の研究によれば、新しい言語項目の習得は内因性報酬系(腹側被蓋野とその関連領域)を活性化させ、これがドーパミン放出を通じて記憶定着を促進する。この知見に基づけば、学習過程に報酬感(達成感、好奇心の充足など)を組み込むことが重要となる。

神経可塑性を促進するための具体的アプローチとして、Doughty & Long(2003)の「焦点化した形式注目」(Focus on Form)が挙げられる。この方法は、意味中心の活動の中で、必要に応じて言語形式に学習者の注意を向けさせるものである。Longの主張によれば、この「焦点化された注意」は神経ネットワークの再構成に不可欠であり、純粋な暗示的学習(意識的注意なし)や純粋な明示的学習(文脈から切り離された形式学習)よりも効果的である。

神経可塑性の観点から特に注目されるのが、Tomasello(2003)の「用法基盤学習法」(usage-based learning)である。この理論によれば、言語習得は抽象的規則の内在化ではなく、具体的な言語使用例からのパターン抽出プロセスである。神経科学的には、これは「ヘブ的学習」(Hebbian learning: “together fire, together wire”原理)に対応する。Tomaselloのアプローチを言語教育に応用するには、以下の原則に従う:

  1. 実際の言語使用文脈に埋め込まれた学習
  2. 十分な具体例の提示(パターン抽出の基盤として)
  3. 頻度効果の活用(高頻度のパターンを優先的に提示)
  4. 構文的フレームワークの徐々なバリエーション

メモリー技術と神経可塑性の接点として、Legge et al.(2012)の「空間的記憶法」(spatial mnemonics)も効果的である。これはMaguireのタクシー運転手研究から着想を得たもので、言語情報を仮想的な空間に配置して記憶する方法である。例えば、熟知した経路上の様々な地点に新しい語彙を「配置」し、その経路を精神的に辿ることで単語を想起するといった具合だ。Leggeらの実験によれば、この方法は特に大量の語彙を順序通りに記憶する必要がある場合に効果的である。

神経可塑性を最大化するための物理的環境要因としては、Cotman & Berchtold(2002)の「総合的神経可塑性促進モデル」が重要な示唆を提供している。彼らの研究によれば、以下の要素が脳の可塑性を促進する:

  1. 適度な身体活動:有酸素運動が海馬神経新生を促進し学習能力を高める
  2. 十分な睡眠:特に深い睡眠(徐波睡眠)が記憶固定化に不可欠
  3. 適切な栄養:オメガ3脂肪酸などの特定栄養素が神経可塑性を支える
  4. ストレス管理:慢性的高ストレスが海馬機能を阻害する

これらの知見からは、言語学習セッションの配置にも重要な示唆が得られる。例えば、Zhang & Li(2013)の研究は、有酸素運動直後の学習セッションが記憶定着を約20%向上させることを示している。同様に、Gais et al.(2006)は、学習と睡眠の最適な関係について研究し、新しい言語材料の学習と夜の睡眠の間に3-7時間の間隔を置くのが最も効果的であることを発見した。

年齢と神経可塑性の関係については、長年「臨界期仮説」(critical period hypothesis)が支配的だったが、最新の神経科学研究はより複雑な現実を示している。Vanhove(2013)のメタ分析によれば、言語習得能力は思春期以降も緩やかに低下するものの、完全に消失するわけではない。むしろ、Green et al.(2010)の研究が示すように、成人学習者は代償的神経メカニズムを発達させ、異なる脳領域(特に前頭前野)を動員して学習効率を維持できる。

この知見に基づく成人学習者向けの神経科学的最適化アプローチとして、Antoniou et al.(2016)は「認知強化言語学習」(cognitively enhanced language learning)を提案している。これは以下の要素で構成される:

  1. 明示的・暗示的学習の統合(成人の強みである分析的能力の活用)
  2. 認知制御ネットワークの意図的活性化(タスク切り替え、干渉抑制など)
  3. 既存知識との意図的連結(既存の神経ネットワークを足場とする)
  4. メタ認知戦略の活用(成人の発達した前頭前野機能の活用)

神経可塑性を最大化する最新のアプローチとして、Li & Grant(2016)の「適応的困難度調整」(adaptive difficulty adjustment)も注目に値する。彼らのニューロイメージング研究によれば、学習タスクが「望ましい困難」レベル(成功率約80%)にある時、前頭前野と線条体の間の機能的結合が最も強化される。この知見に基づき、彼らは言語学習ソフトウェアに「適応的困難度調整アルゴリズム」を実装し、これが特に語彙習得速度を約25%向上させることを示した。

VI. 個人差を考慮した訓練法最適化:学習者変数と介入効果

これまで検討してきた認知的最適化アプローチは、あらゆる学習者に同じように効果があるわけではない。学習者の個人差要因—認知スタイル、作業記憶容量、言語適性など—を考慮した訓練法の最適化が重要である。

学習者の個人差を考慮した訓練法最適化の理論的枠組みとして、Robinson(2002)の「適性複合仮説」(Aptitude Complex Hypothesis)がある。この理論によれば、特定の学習タスクや指導法の効果は、それが必要とする認知能力と学習者の認知プロファイルの一致度によって決まる。例えば、明示的文法指導は分析的能力の高い学習者に効果的である一方、暗示的学習は記憶能力や帰納的学習能力の高い学習者に適している。

この理論を実証的に検証したのがLi(2015)の「適性-処理-訓練相互作用」(aptitude-processing-training interaction)研究である。彼の実験では、異なる認知プロファイルを持つ学習者に対して、認知特性に合致した訓練法と不一致の訓練法の効果を比較した。結果として、認知特性と訓練法が一致した場合、不一致の場合と比較して学習効率が約35%向上することが示された。

言語学習における主要な個人差次元とそれに対応した最適訓練法としては、以下が提案されている:

  1. 認知スタイル(分析型vs.総合型):Dörnyei & Ryan(2015)の研究によれば、分析型学習者は明示的ルール説明とパターン発見活動から恩恵を受ける一方、総合型学習者はより全体的・文脈的アプローチ(例:自然なコミュニケーション活動)で効果的に学習する。
  2. 作業記憶容量:Wen(2015)によれば、作業記憶容量の低い学習者は以下のアプローチで支援できる:
    • 情報の分割提示(chunking)
    • 外部記憶補助(メモ、図表など)の活用
    • 処理負荷の漸進的増加

    対照的に、作業記憶容量の高い学習者は複雑なタスクや同時並行処理を含む活動から最大の恩恵を受ける。

  3. 音韻符号化能力:Juffs & Rodríguez(2015)の研究によれば、音韻符号化能力(新しい音声を識別・記憶する能力)の低い学習者は以下のアプローチで支援できる:
    • 視覚的補助(文字情報の併用)
    • 減速音声の使用(後に徐々に自然速度へ)
    • 集中的音韻訓練(最小対立ペアなど)
  4. 外向性-内向性:Dewaele & Al-Saraj(2015)の研究によれば、外向的学習者はグループ活動や即興的コミュニケーションタスクで最もよく学ぶ傾向があるのに対し、内向的学習者は個別学習時間と熟考の機会を必要とする。ただし、両者に共通するのは、安全で支持的な学習環境の重要性である。

学習スタイルの観点からは、Oxford(2003)の「個別化言語学習戦略」(individualized language learning strategies)も重要である。彼女の研究によれば、学習者は自分の認知スタイルに合った学習戦略を選択することで学習効率を大幅に向上できる。ただし、Reid(2014)が指摘するように、単に「得意な」スタイルだけに頼るのではなく、不得意なスタイルも徐々に強化することで、より総合的な言語能力が発達する。

言語適性要素と習得困難点の対応については、Skehan(2002)の研究が具体的な指針を提供している。彼のモデルによれば、言語適性は単一の能力ではなく、少なくとも四つの独立した要素で構成される:

  1. 音韻符号化能力:新しい音声の識別・記憶能力(発音習得に特に重要)
  2. 言語分析能力:言語パターンの識別・一般化能力(文法習得に特に重要)
  3. 作業記憶容量:複雑な言語情報の処理・操作能力(複雑な統語処理に特に重要)
  4. 記憶能力:言語形式と意味の連合・保持能力(語彙習得に特に重要)

興味深いことに、これらの適性要素は特定の習得困難点と対応している。例えば、音韻符号化能力の低い学習者は発音習得に困難を示す傾向があり、言語分析能力の低い学習者は複雑な文法規則の習得に苦労する。これらの対応関係を理解することで、特定の学習困難に対する標的的介入が可能になる。

個人差に対応した指導法の最適化アプローチとして、Grigorenko & Sternberg(1997)の「成功的インテリジェンス理論」(Theory of Successful Intelligence)の応用も注目される。この理論によれば、学習者は三つの知性—分析的、創造的、実践的—を様々な程度で持っている。彼らの「三重符号化教授法」(triarchic teaching)は、これら三つの知性すべてを活用する多様な活動を含む。具体的には:

  1. 分析的活動:比較、対比、評価、分析
  2. 創造的活動:創作、想像、仮説設定、設計
  3. 実践的活動:応用、実施、活用、実演

Grigorenkoらの実験によれば、この三重符号化アプローチは従来の単一的アプローチより約30%高い学習効果をもたらした。特に重要なのは、このアプローチがあらゆる学習者プロファイルに対して一定以上の効果を示した点である。

個人差を考慮した学習環境デザインの最新アプローチとして、Hwang et al.(2017)の「適応型言語学習システム」(adaptive language learning system)が挙げられる。このシステムは以下の特徴を持つ:

  1. 学習者の認知プロファイル診断(作業記憶、帰納的学習能力など)
  2. 個別学習経路の動的設計(強みを活かし、弱みを補強)
  3. リアルタイム進捗モニタリングと介入調整
  4. 多様な提示モードとタスクタイプの提供

Hwangらの実証研究によれば、このような適応型システムは非適応型システムと比較して、特に学習者間の成績差を減少させる効果があることが示されている。これは、個別最適化アプローチが特に「リスク」学習者(特定の認知的制約を持つ学習者)に恩恵をもたらすことを示唆している。

VII. 結論:認知的限界突破のための統合的アプローチ

本章では、言語処理の認知的限界を突破するための科学的に裏付けられた訓練法を多角的に検討してきた。分散学習の原理、多感覚統合と記憶定着、深層処理と精緻化、言語スキル別の訓練法、神経可塑性を最適化する学習環境、そして個人差を考慮した訓練法最適化まで、幅広い視点から実践的アプローチを考察した。これらの知見を統合すれば、言語学習の効率と効果を飛躍的に高めることが可能である。

認知科学的言語学習研究からの主要な結論として、以下の点が特に重要である:

  1. 効果的な言語学習は単なる時間投資や努力の問題ではなく、認知心理学と神経科学の原理に基づいた学習方法の質が決定的に重要である。特に、分散反復、多感覚統合、深層処理、神経可塑性最適化などの原理を意識的に適用することで、同じ時間投資でもはるかに大きな学習効果が得られる。
  2. 言語スキルごとに特有の認知的ボトルネックが存在し、これらに対応した標的的訓練法が必要である。例えば、語彙習得には分散反復と精緻化、文法習得には明示的・暗示的アプローチの統合、読解には処理効率化と作業記憶拡張、聴解にはメタ認知的戦略とボトムアップ処理強化、発話には自動化促進と流暢性訓練が特に効果的である。
  3. 神経可塑性の最適化には、入力の質と量、学習環境、身体的条件(運動、睡眠、栄養など)を含む総合的アプローチが必要である。特に重要なのは、「望ましい困難」レベルの維持と報酬系の活性化であり、これらが神経ネットワークの再構築を最大化する。
  4. 学習者の個人差(認知スタイル、作業記憶容量、言語適性など)を考慮した訓練法の最適化が、学習効率を大幅に向上させる。一律のアプローチではなく、学習者の認知プロファイルに合致した訓練法の選択が重要である。

これらの知見に基づく総合的訓練アプローチとして、Nation & Webb(2011)の「TOPRA」(Task-induced involvement load, Orientation, Processing, Repetition, Association)モデルを発展させた「統合的認知最適化アプローチ」が提案できる。このアプローチは以下の五つの核心的原則に基づく:

  1. 最適課題関与度(Optimal Task Involvement):学習課題が適切な認知的関与(必要性、探索、評価)を要求し、「望ましい困難」レベルを維持する。
  2. 多面的方向づけ(Multifaceted Orientation):学習項目に対して複数の視点(意味的、形態的、音韻的、文脈的など)からアプローチする。
  3. 処理深度最適化(Processing Depth Optimization):表層処理から深層処理まで、段階的かつバランスのとれた処理を促進する。
  4. 科学的分散反復(Scientific Spaced Repetition):忘却曲線に基づいて最適化された間隔で反復学習を行う。
  5. 多層的連想強化(Multilayered Association Enhancement):学習項目を多様な知識ネットワーク(言語内連想、言語間連想、概念連想、個人的連想など)に統合する。

このアプローチの実践的応用例として、Muñoz et al.(2018)の「認知的最適化言語学習プログラム」(Cognitively Optimized Language Learning Program)がある。このプログラムは上記の原則に基づいて設計された12週間の集中コースで、特に「B2の壁」を突破しようとする中上級学習者を対象としている。Muñozらの報告によれば、このプログラムを完了した学習者の84%がCEFR B2からC1レベルへの移行に成功し、これは従来の同等時間の一般的言語コースの移行率(約42%)を大幅に上回る結果となった。

認知科学的言語学習研究の今後の課題としては、以下の点が特に重要である:

  1. 個別化学習の精緻化:認知プロファイリングの精度向上と、それに基づく学習経路の最適化。
  2. 神経可塑性促進技術の発展:非侵襲的脳刺激法(tDCS, TMS)や神経フィードバック技術の言語学習への応用可能性。
  3. テクノロジー統合の最適化:仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、適応型学習システムなどの新技術を認知的原理に基づいて効果的に活用する方法の開発。
  4. 社会的・情動的要因との統合:認知的最適化と社会的・情動的要因(動機づけ、不安、アイデンティティなど)の相互作用の理解と統合的アプローチの開発。

最後に、認知的限界の突破は単なる「テクニック」や「ハック」の問題ではなく、人間の学習能力の本質的理解に基づいた系統的アプローチを要することを強調したい。本章で検討した科学的知見は、言語学習における「魔法の弾丸」を提供するものではなく、むしろ効果的学習の複雑さと多面性を示している。しかし同時に、これらの知見の統合的適用によって、言語学習の効率と効果を大幅に向上させる実践的可能性も示している。CEFRスケールを超えた真の言語熟達は、こうした科学的基盤に立った体系的実践によって達成可能なのである。

次回の第8部では、デジタル時代の言語習得と認知拡張に焦点を移し、AIやデジタルツールが言語学習者の認知的限界をどのように拡張できるかを探究する。

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