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世界の食料危機を救うカギ?サツマイモの食料安全保障における戦略的役割

第11部:世界の食料安全保障におけるサツマイモの戦略的位置づけ

1. グローバルな食料安全保障への貢献可能性

世界は人口増加、気候変動、資源制約の複合的課題に直面しており、食料安全保障の確保は国際社会の喫緊の課題となっている。サツマイモは、その優れた栄養特性、環境適応性、生産効率の高さから、世界の食料安全保障に大きく貢献しうる作物として注目されている。その潜在的役割と実現に向けた課題を科学的に理解することは、持続可能な食料システム構築において重要である。

サツマイモの食料安全保障における基本的価値について、Low et al. (2007)の研究は包括的な評価を提供している。彼らの分析によれば、サツマイモは単位面積あたりのエネルギー生産効率が極めて高く(約194GJ/ha・年)、これは主要穀物(小麦114GJ/ha・年、トウモロコシ145GJ/ha・年)を大きく上回る。特に、Grüneberg et al. (2015)は限られた資源条件下での生産性の高さを強調し、半乾燥地や低肥沃度土壌でも一定の収量を維持できることを示している。

栄養安全保障の観点からも重要性が高い。Bouis & Saltzman (2017)によれば、サツマイモ、特にオレンジ肉品種は、食料アクセスの課題と「隠れた飢餓」(微量栄養素欠乏)の両方に同時に対応できる数少ない作物の一つである。具体的に、Mwanga et al. (2011)はサブサハラアフリカにおけるオレンジ肉サツマイモの導入により、ビタミンA摂取量が3-5倍増加し、子どもの夜盲症リスクが40-60%低減した事例を報告している。

気候変動レジリエンスも食料安全保障における重要な側面である。Jarvis et al. (2012)の気候モデル分析によれば、サツマイモは主要穀物と比較して温度上昇と降水パターン変化への適応能力が高く、2050年の気候シナリオ下でも現在の生産適地の約75%が維持されると予測されている。さらに、Knox et al. (2012)はサツマイモの乾燥耐性と高温耐性が、気候変動の影響が特に深刻と予想されるアフリカ東部や南アジアでの食料安全保障確保に貢献する可能性を指摘している。

資源効率の観点からも評価が高い。Motsa et al. (2015)の研究によれば、サツマイモは主要穀物と比較して、単位水消費量あたりの生産効率(水利用効率)が高く、特に水資源の制約が厳しい地域での食料生産に適している。具体的には、Laurie et al. (2015)はサツマイモの水利用効率がトウモロコシの約1.5倍、小麦の約2倍であることを示している。

食料アクセスの改善という観点でも重要である。De Brauw et al. (2018)の研究によれば、サツマイモは収穫時期の調整が比較的容易で、貯蔵性も高いため、食料不足の端境期における供給源として機能する。特に、Fuglie & Oates (2010)はサブサハラアフリカにおける「端境期戦略作物」としてのサツマイモの役割を評価し、食料アクセスの季節変動緩和に貢献していることを報告している。

しかし、潜在能力を最大化するための課題も多い。Andrade et al. (2016)は途上国におけるサツマイモの生産性は依然として潜在収量の30-40%にとどまっており、この収量ギャップの解消が食料安全保障への貢献拡大の鍵であると指摘している。また、Thiele et al. (2017)は、サプライチェーンの脆弱性や市場アクセスの制約が、特に小規模農家のサツマイモ生産拡大を阻む重要な障壁となっていることを報告している。

国際協力の重要性も指摘されている。Heck et al. (2020)は国際農業研究協議グループ(CGIAR)のサツマイモ研究プログラムのレビューを行い、国際的な育種ネットワークと技術移転の枠組みが、特にアフリカと東南アジアにおけるサツマイモの食料安全保障への貢献拡大に不可欠であると結論づけている。

最新の研究動向として、Low et al. (2020)は食料安全保障、栄養改善、気候変動対応の三重目標を同時に達成するための「気候スマート」サツマイモ品種の開発と普及アプローチを提案している。さらに、Petsakos et al. (2019)はサツマイモの世界的な需給予測モデルを構築し、適切な投資と政策支援により、2030年までに現在の生産量の約1.5倍に拡大する可能性があることを示している。

2. 栄養不足対策としてのオレンジ肉サツマイモ普及プログラム

ビタミンA欠乏症は世界の公衆衛生上の重大な課題であり、特に途上国の子どもと妊産婦に深刻な健康影響をもたらしている。β-カロテン(プロビタミンA)を豊富に含むオレンジ肉サツマイモ(OFSP)は、この問題に対する食料ベースのアプローチとして国際的に注目されている。その普及プログラムの進展と課題、成功要因を科学的に分析することは、食料を通じた栄養改善戦略の発展において重要である。

OFSPを活用した栄養改善プログラムの基本的枠組みについて、Bouis et al. (2011)の先駆的研究は重要な概念化を提供している。彼らの提案する「バイオフォーティフィケーション」(生物学的栄養強化)アプローチは、従来の栄養介入(サプリメント配布や食品強化)と比較して、持続性と費用対効果の面で優位性を持つことが示されている。特に、Low et al. (2009)のモザンビークでの研究は、OFSP普及により対象地域の5歳未満児のビタミンA摂取不足が63%から38%に減少し、血清レチノール値が改善したことを報告している。

OFSP普及プログラムの実施モデルについて、de Brauw et al. (2018)は包括的なレビューを行っている。彼らの分析によれば、効果的なプログラムは「統合的アプローチ」を採用しており、(1)栄養教育、(2)農業技術支援、(3)市場連携の三要素を組み合わせている。特に、Hotz et al. (2012)のウガンダでの研究は、この統合的アプローチにより、プログラム実施後2年間にわたって持続的な栄養改善効果が観察されたことを報告している。

プログラム実施における成功要因について、Okello et al. (2015)は重要な知見を提供している。彼らの分析によれば、効果的なOFSP普及プログラムの鍵となる要素として、(1)地域の食文化に適合した品種選定、(2)女性の参加促進、(3)現地の普及システムの活用、(4)農民参加型の技術開発が挙げられる。特に、Maru et al. (2018)はルワンダでの事例研究を通じて、女性グループを中心とした普及アプローチがOFSPの家庭内消費増加と子どもの栄養状態改善に有効であることを示している。

品種開発と種苗供給システムも重要な要素である。Grüneberg et al. (2015)は国際イモ類研究センター(CIP)の育種プログラムについて詳細に分析し、アフリカ諸国の多様な環境条件と消費者嗜好に適合した一連のOFSP品種(例:Kabode、NASPOT 12、NASPOT 13など)の開発成功を報告している。しかし、McEwan et al. (2015)は種苗供給の持続性が依然として課題であることを指摘し、農民種苗生産者ネットワークなどの革新的アプローチの重要性を強調している。

行動変容コミュニケーション戦略も普及プログラムの核心的要素である。Gilligan et al. (2014)はウガンダでの詳細な評価研究を行い、特に「おいしさ」「健康な子ども」「目の健康」などの具体的メッセージと、調理実演を組み合わせたコミュニケーション戦略の有効性を示している。さらに、Lozano et al. (2017)はマラウイでの事例研究を通じて、地域メディア(コミュニティラジオなど)と対面コミュニケーションを組み合わせたマルチチャネルアプローチの重要性を指摘している。

政策環境と制度的支援の重要性も見逃せない。Jenkins et al. (2018)は東アフリカ諸国でのOFSP政策主流化プロセスを分析し、国家栄養戦略へのバイオフォーティフィケーション統合が普及拡大の鍵となることを示している。特に、Birner et al. (2018)は複数セクター(農業、保健、教育など)の政策連携がプログラムの規模拡大に不可欠であると強調している。

費用対効果の観点からも高い評価がなされている。Saltzman et al. (2016)のアフリカ4カ国(ザンビア、ルワンダ、ウガンダ、モザンビーク)でのプログラム評価によれば、栄養障害による疾病負担(DALY: Disability-Adjusted Life Years)削減に対するOFSP普及の費用対効果は、1DALY回避あたり約15-20ドルと推定され、WHO基準で「極めて費用対効果が高い」介入に分類される。この結果について、Low et al. (2017)は従来のビタミンAサプリメント配布(1DALY回避あたり約40-60ドル)と比較しても優位性があることを指摘している。

長期的インパクト評価も重要な研究テーマである。Jones & de Brauw (2015)のモザンビークでの追跡調査によれば、プログラム実施から3年後においても、対象世帯の61%がOFSPを継続的に栽培しており、子どもの栄養状態改善効果も維持されていることが確認されている。一方、Thiele et al. (2017)は持続性確保の課題として、種苗供給システムの自立化と民間セクターの関与強化の必要性を指摘している。

最新の研究動向として、Low et al. (2020)はCOVID-19パンデミック下でのOFSP普及アプローチの適応について報告し、デジタル技術を活用した遠隔研修や、市場混乱への対応としての地域内食料システム強化の重要性を指摘している。また、Laurie et al. (2021)は気候変動対応とOFSP普及の統合アプローチを提案し、干ばつ耐性とβ-カロテン含量を両立させた新世代品種の開発進捗を報告している。

3. 国際研究機関の取り組みと成果

世界の食料安全保障におけるサツマイモの潜在的役割を最大化するためには、国際的な研究協力と技術開発が不可欠である。特に、国際イモ類センター(CIP)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などが推進する研究・開発プログラムは、サツマイモを通じた食料安全保障強化と栄養改善に大きく貢献している。これらの国際的取り組みの進展と課題、そして今後の展望を科学的に理解することは、グローバルな食料政策の発展において重要である。

国際イモ類センター(CIP)のサツマイモ研究プログラムについて、Ghislain et al. (2019)の包括的レビューは重要な知見を提供している。彼らの分析によれば、CIPは1970年代の設立以来、50以上の国々と協力してサツマイモの遺伝資源収集・保全、育種、栽培技術改良、収穫後技術開発などを推進し、特に1990年代以降は栄養改善に焦点を当てたプログラムを展開している。具体的に、Andrade et al. (2016)はCIPの育種プログラムが過去20年間に200以上の改良品種を開発し、そのうち40以上のオレンジ肉品種がアフリカと東南アジアで広く普及していることを報告している。

「オレンジの力(Orange Power)」イニシアチブについて、Low et al. (2017)は詳細な経過分析を提供している。このビル&メリンダ・ゲイツ財団の支援による大規模プログラムは、2009年に開始され、アフリカ10カ国でのオレンジ肉サツマイモ普及を通じたビタミンA欠乏症対策を目的としている。Bouis & Saltzman (2017)によれば、このプログラムにより2020年までに約680万世帯がオレンジ肉サツマイモを採用し、特に5歳未満児と妊産婦の栄養状態改善に貢献したことが報告されている。

SWEETGAINSコンソーシアムも重要な国際的枠組みである。Thiele et al. (2020)の分析によれば、このCIP、ゲイツ財団、USAID、DFIDなどが参画する国際研究コンソーシアムは、サツマイモのバリューチェーン全体(育種、種苗生産、栽培、加工、マーケティング)を対象とした統合的アプローチを採用している。特に、Okello et al. (2018)はこのコンソーシアムが開発した「シードシステムトゥーリング(SST)」アプローチが、アフリカ各国での高品質種苗普及に革新的な成果をもたらしていることを報告している。

気候変動対応研究も国際協力の重要テーマである。Reynolds et al. (2015)は、CGIAR気候変動・農業・食料安全保障プログラム(CCAFS)とCIPの協働による「気候スマートサツマイモ」イニシアチブについて詳細に分析している。彼らの報告によれば、このプログラムは干ばつ耐性、高温耐性、水利用効率などの気候レジリエンス特性と栄養価を両立させた品種開発を進めており、2018年までに10の「気候スマート」品種が東アフリカで普及しはじめていることが確認されている。

遺伝資源保全と共有システムも国際協力の核心的要素である。Ellis et al. (2020)はCIPが管理する世界最大のサツマイモ遺伝資源コレクション(約8,000点の在来品種と野生種)について詳細な分析を行い、この多様な遺伝資源が気候変動適応や栄養強化品種開発の基盤となっていることを示している。特に、Roullier et al. (2013)はこの遺伝資源コレクションの分子遺伝学的評価を通じて、南米アンデス地域とオセアニアに主要な遺伝的多様性ホットスポットが存在することを明らかにしている。

能力開発プログラムも重要な国際協力の柱である。Zeller et al. (2018)の評価研究によれば、CIPのリーダーシップによる「サツマイモ育種アクセラレーター」プログラムは、アフリカと東南アジアの15カ国で100名以上の若手育種家を育成し、各国の育種プログラム強化に貢献している。同様に、Wamalwa et al. (2016)は参加型品種選抜(PVS)アプローチの研修プログラムが、各国の育種システムと農民間の連携強化に有効であることを報告している。

ジェンダー主流化も注目される国際的取り組みである。Mudege et al. (2017)の分析によれば、CIPの「ジェンダー・トランスフォーマティブ・アプローチ」は、サツマイモ研究開発の全プロセス(品種選抜基準設定、技術設計、普及戦略など)にジェンダー視点を統合している。特に、Sindi et al. (2019)はルワンダでの事例研究を通じて、このアプローチが女性農家のサツマイモ生産・販売からの収益向上(従来比約45%増)と家庭内意思決定力強化に貢献していることを報告している。

民間セクターとの連携も進展している。Rajendran et al. (2017)の研究によれば、CIPの「サツマイモ・プロフィット・イニシアチブ」は、種苗生産、加工、流通など各段階でのビジネスモデル開発を支援し、特にアフリカ7カ国で150以上の中小企業の参入を促進している。具体的に、Glover et al. (2019)はマラウイでの加工企業発展事例を分析し、オレンジ肉サツマイモペーストを用いた製パン事業が栄養改善と雇用創出の両面で成果を上げていることを報告している。

デジタル技術活用も最新の研究テーマである。Delgado et al. (2021)は、CIPが開発したサツマイモ病害診断AI「Sweetpotato AI」について詳細に報告している。このスマートフォンベースのツールは、機械学習アルゴリズムを用いて現場での迅速な病害診断を可能にし、特にアフリカでのウイルス病対策に貢献していることが示されている。また、Kikulwe et al. (2020)はウガンダでのデジタル市場情報システム導入事例を分析し、小規模農家の市場アクセス向上と収入増加に効果があることを確認している。

最新の国際的取り組みとして、Moyo et al. (2022)はCIPとアフリカ連合の協働による「アフリカ・サツマイモ・イニシアチブ2030」について報告している。この包括的プログラムは、気候変動対応、栄養強化、市場開発を統合し、2030年までにアフリカ20カ国で1,500万世帯のサツマイモ生産と消費拡大を目指している。また、Paris et al. (2023)はアジア太平洋地域でのCIP主導の「ルートクロップ・フォー・フード・レジリエンス」プログラムを分析し、気候変動の激しい島嶼国での食料安全保障強化に貢献していることを報告している。

4. 極端気象と病害虫リスクへの対応戦略

気候変動の進行に伴い、極端気象現象(干ばつ、洪水、熱波など)と病害虫リスクの増大が世界の食料生産に深刻な脅威をもたらしている。サツマイモは一定の環境ストレス耐性を持つものの、これらの新たなリスクに対応した生産システムの強化が不可欠である。気候変動下でのサツマイモ生産のレジリエンス(回復力)を科学的に評価し、その強化戦略を検討することは、持続可能な食料安全保障の実現において重要である。

極端気象に対するサツマイモの生理的応答について、Yanez et al. (2017)の研究は詳細な分析を提供している。彼らの制御環境下での実験によれば、サツマイモは中程度の水ストレス(圃場容水量の40-60%)に対して比較的高い適応能力を示し、光合成速度の維持と効率的な水利用を実現する生理的メカニズムを持つことが確認されている。特に、Gajanayake et al. (2014)は根系構造の可塑性(側根発達の促進と根系分布の変化)が水ストレス適応の鍵であることを明らかにしている。

高温ストレスへの応答も重要なテーマである。Kaushal et al. (2013)の研究によれば、大部分のサツマイモ品種は25-30℃の範囲で最適生育を示すが、多くの品種は35℃以上の高温条件下でも生存可能であり、特に短期的な熱波への耐性が比較的高いことが示されている。しかし、Barkley et al. (2017)は高温が継続すると塊根形成と肥大が著しく阻害されること、特に夜間高温(30℃以上)の影響が大きいことを報告している。

病害虫リスクに関して、McQuate et al. (2016)の総説は気候変動に伴う新たな脅威を包括的に分析している。特に懸念されるのはサツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)の分布拡大であり、Bebber et al. (2014)のモデル予測によれば、温暖化進行に伴い2050年までに現在の分布域から平均して約100-150km極方向に拡大すると推定されている。また、Gamarra et al. (2016)はサツマイモウイルス病(SPVD)の媒介虫であるアブラムシ類の活動期間延長と世代数増加が、熱帯・亜熱帯地域での病害リスク増大をもたらす可能性を指摘している。

このような脅威に対する遺伝的改良アプローチについて、Gruneberg et al. (2020)の研究は重要な進展を報告している。CIPの育種プログラムでは、乾燥耐性、高温耐性、病害抵抗性などの複合的ストレス耐性を持つ品種開発が進められており、特にアフリカ向けの「気候スマート」品種群(例:NASPOTH、Delvia、Irinaなど)が開発されている。Khan et al. (2016)はこれらの品種が慣行品種と比較して、中度〜重度の干ばつ条件下でも45-60%高い収量を維持できることを確認している。

栽培管理技術の適応も重要な対応戦略である。Motsa et al. (2015)の南アフリカでの研究によれば、植付時期の調整(雨季の最適時期への移行)、マルチング、間作などの組み合わせにより、干ばつ条件下でも収量の安定性が大幅に向上することが示されている。特に、Nedunchezhiyan et al. (2012)はマルチングによる土壌水分保持が干ばつ条件下での収量低下を30-40%軽減することを報告している。

統合的病害虫管理(IPM)アプローチも気候変動適応の鍵である。Munyua et al. (2013)の東アフリカでの研究によれば、耕種的防除(輪作、植付時期調整など)、生物的防除、選択的薬剤使用を組み合わせたIPMシステムが、気候変動に伴う病害虫圧の増大下でも有効であることが確認されている。特に、Mutamiswa et al. (2017)はプッシュプル技術(忌避植物と誘引植物の組み合わせ)がサツマイモゾウムシの被害を従来の化学的防除と同等レベルまで抑制できることを報告している。

種苗システムの強化も重要な対応戦略である。McEwan et al. (2015)の研究によれば、気候変動条件下での種苗供給の安定化には、分散型の種苗生産・配布システムと緊急時対応メカニズムの統合が有効である。具体的に、Gibson et al. (2014)はウガンダでの「三層種苗システム」(基本苗、増殖苗、認証苗の体系的生産)が、干ばつや病害発生後の迅速な種苗供給回復に貢献していることを報告している。

早期警戒システムと気象情報サービスの活用も進展している。Serra et al. (2019)の研究によれば、季節予報と連動したサツマイモ栽培意思決定支援システムの導入により、モザンビークの小規模農家の旱魃リスク管理能力が向上し、平均収量の安定性が15-20%改善したことが確認されている。同様に、Abass et al. (2018)はタンザニアでのモバイル気象情報サービスの活用事例を分析し、植付時期最適化による収量変動リスクの低減効果を報告している。

保険メカニズムの開発も注目される。IFAD (2019)のレポートによれば、エチオピアとケニアで試験的に導入されたサツマイモ向け「指標型天候保険」は、極端気象イベントによる収量損失の補償を通じて、小規模農家のリスク管理能力強化に貢献している。特に、Carter et al. (2017)は衛星データと地上観測を組み合わせた革新的な指標開発により、保険の精度と費用対効果が向上していることを報告している。

コミュニティベースの適応アプローチも重要である。Prain et al. (2020)の研究によれば、フィリピンとベトナムでの参加型気候変動適応プロセスにより、地域特有のリスクと対応策が特定され、特に伝統的知識と科学的知見の統合が有効であることが示されている。具体的に、Thao et al. (2016)はベトナムでの「気候フィールドスクール」アプローチが農民の気候リスク認識と適応能力向上に効果的であることを報告している。

最新の研究動向として、Ravi et al. (2021)はゲノム編集技術を活用した次世代「気候レジリエント」品種の開発について報告している。CRISPR-Cas9技術を用いた干ばつ耐性関連遺伝子(DREB、ERFなど)の機能強化により、極端な水ストレス下でも生存可能な系統の開発が進行中である。また、Nyamwaro et al. (2022)は「ワンヘルス」アプローチによる気候変動下での病害虫管理を提案し、環境、植物、病原体、媒介者の相互作用を統合的に考慮したリスク管理フレームワークの有効性を示している。

5. 農民組織と市場アクセス改善への取り組み

サツマイモの食料安全保障への貢献を最大化するためには、小規模農家の生産性向上だけでなく、組織化による市場参入能力の強化が不可欠である。特に、途上国の女性や若者などの脆弱層にとって、サツマイモは所得創出と生計向上の重要な機会となりうる。農民組織の発展と市場アクセス改善の取り組みを科学的に分析し、その成功要因と課題を理解することは、包摂的なバリューチェーン開発において重要である。

サツマイモの市場参入障壁について、Mmasa & Msuya (2012)の研究は重要な分析を提供している。彼らによれば、小規模農家が直面する主な障壁として、(1)少量・分散した生産、(2)市場情報アクセスの制限、(3)収穫後処理・貯蔵施設の不足、(4)輸送インフラの未整備、(5)品質基準の未確立などが挙げられる。特に、Mwakiwa et al. (2020)はアフリカ東部での調査から、これらの障壁が特に女性農家にとって深刻であり、収入の約30-40%を取引コストが占めることを報告している。

こうした課題への対応として、農民組織の役割が注目されている。Shiferaw et al. (2011)の包括的レビューによれば、集団行動を通じた取引コスト削減とバーゲニングパワー強化が、小規模農家の市場参入に不可欠である。具体的に、Mudege et al. (2018)はウガンダとブルンジでの事例研究を通じて、協同組合形成によりサツマイモ生産者の販売価格が平均25-35%向上したことを報告している。

特に女性の組織化と市場参入支援が重要なテーマである。Mayanja et al. (2016)のウガンダでの研究によれば、女性グループを基盤とした市場参入支援プログラムにより、女性農家の交渉力強化と収益向上(約40-50%増)が達成されている。このアプローチについて、Yachin et al. (2018)は「ジェンダー・トランスフォーマティブ」な側面を強調し、市場参入過程での女性のエージェンシー(自律的行動力)強化が家庭内での意思決定力向上にも波及することを示している。

契約栽培モデルの発展も注目される。Glover et al. (2019)の研究によれば、サツマイモ加工企業と小規模農家の契約関係は、市場アクセスの安定化と技術普及の両面で効果的である。特に、Wiggins et al. (2014)はナイジェリアでのケーススタディを通じて、加工企業によるインプット(優良種苗など)提供と技術支援を伴う契約モデルが、小規模農家の収量を約60-70%向上させたことを報告している。

バリューチェーン開発アプローチも重要である。Donovan et al. (2017)の研究によれば、サツマイモのバリューチェーン全体を視野に入れた包括的支援が市場アクセス改善に効果的である。具体的に、Mmasa & Msuya (2012)はタンザニアでの「マルチステークホルダー・イノベーション・プラットフォーム」アプローチが、生産者、加工業者、流通業者、政策立案者の協働を促進し、バリューチェーン全体の効率性向上に貢献していることを報告している。

収穫後技術の改良も市場アクセスの鍵である。Shonga et al. (2021)の研究によれば、適切な収穫後処理と貯蔵技術の導入により、サツマイモの市場出荷期間が2-3ヶ月から4-6ヶ月に延長され、販売価格の向上(端境期には通常の1.5-2倍)と収入の安定化が実現している。特に、Amoah et al. (2016)はガーナでの事例研究を通じて、改良型貯蔵庫(サンドボックスシステム)の導入が小規模農家の市場交渉力強化と収益向上に寄与していることを確認している。

ICT(情報通信技術)活用も進展している。Kikulwe et al. (2018)の研究によれば、モバイル技術を活用した市場情報システムの導入により、小規模サツマイモ生産者と買い手のマッチングが促進され、取引コストが約25-30%削減されている。具体的に、Oguntade et al. (2021)はナイジェリアでのモバイルアプリケーション「FarmCrowdy」の事例を分析し、デジタルプラットフォームを通じた販路拡大と価格交渉の透明化が実現していることを報告している。

金融アクセスの改善も重要な要素である。Ouma et al. (2017)の研究によれば、サツマイモの生産・販売サイクルに適応した金融商品の開発が、市場志向型生産への転換に不可欠である。特に、Dziedzoave et al. (2016)はガーナでの「倉庫証券システム」(貯蔵サツマイモを担保とした融資)の導入事例を分析し、収穫期の安値販売回避と投資能力向上に効果を上げていることを報告している。

若者の参画促進も注目される。Njuki et al. (2017)の研究によれば、サツマイモバリューチェーンの現代化(機械化、デジタル化、加工付加価値化など)が若者の参入を促進している。具体的に、Mtonga-Mukumbwa et al. (2020)はザンビアでの「ユース・アグリビジネス・インキュベーター」プログラムが、サツマイモ加工ビジネスでの若者の起業を支援し、雇用創出と所得向上に貢献していることを報告している。

国際開発パートナーの役割も重要である。Thiele et al. (2020)の分析によれば、IFAD、世界銀行、USAIDなどの支援によるサツマイモバリューチェーン開発プロジェクトが、小規模農家の市場参入能力強化に貢献している。特に、Glover & Jones (2019)はCIPとIFADの協働による「サツマイモ・プロフィット・アンド・ヘルス・イニシアチブ」(SPHI)が、アフリカ10カ国で商業的サツマイモ生産者の育成に成果を上げていることを報告している。

最新の研究動向として、Devaux et al. (2023)は「インクルーシブ・ビジネスモデル」の概念化と事例分析を行い、小規模農家と民間企業の互恵的関係構築が持続可能な市場アクセス改善の鍵であることを示している。また、Ferguson et al. (2022)はコロナ危機後の「デジタル・レジリエント・フードシステム」の構築に向けて、サツマイモ等のローカルフードチェーン強化と電子商取引プラットフォームの統合アプローチを提案している。

6. SDGsとの連携と持続可能性への貢献

持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、サツマイモはその多面的価値により複数の目標に同時に貢献しうる戦略的作物として注目されている。特に、飢餓撲滅(SDG2)、健康増進(SDG3)、ジェンダー平等(SDG5)、気候変動対策(SDG13)などへの貢献可能性が高い。サツマイモとSDGsの連携を科学的に分析し、その実現に向けた統合的アプローチを検討することは、持続可能な食料システム構築において重要である。

サツマイモとSDGsの概念的連関について、Petsakos et al. (2019)の研究は包括的な分析を提供している。彼らによれば、サツマイモは少なくとも7つのSDGs(2, 3, 5, 8, 12, 13, 15)に直接的に貢献しうる潜在力を持つ。特に、Low et al. (2020)はオレンジ肉サツマイモの普及が「SDG連鎖反応」を生み出す可能性を指摘し、栄養改善(SDG2.2)を起点として健康向上(SDG3)、教育機会拡大(SDG4)、経済生産性向上(SDG8)へと波及する効果を概念化している。

SDG2(飢餓撲滅)への貢献について、Petsakos et al. (2019)のモデル分析は重要な定量的評価を提供している。彼らの予測によれば、サツマイモの生産拡大と生産性向上により、2030年までにサブサハラアフリカと東南アジアで約4,000万人の食料アクセス改善に貢献する可能性がある。特に、Heck et al. (2020)はCIPの「気候スマートサツマイモ」プログラムを通じて、2030年までにアフリカ15カ国で約1,500万農家の食料安全保障強化が見込まれることを報告している。

栄養面での貢献(SDG2.2)も重要である。Bouis et al. (2019)の研究によれば、オレンジ肉サツマイモを通じたビタミンA摂取改善は、現在のプログラム規模でも年間約30万-40万DALYs(障害調整生命年)の健康改善効果があると推定されている。さらに、de Brauw et al. (2018)はこの効果が女性と5歳未満児に特に顕著であることを示し、世代間の栄養改善サイクル創出に貢献していることを報告している。

ジェンダー平等(SDG5)への貢献について、Mudege et al. (2019)の研究は重要な知見を提供している。彼らの分析によれば、サツマイモは多くのアフリカ地域で「女性の作物」として位置づけられており、その商業化支援が女性の経済的エンパワメントと意思決定力強化に寄与している。具体的に、Maindi et al. (2021)はケニアでの調査から、オレンジ肉サツマイモビジネスに参画した女性の約70%が家庭内での発言力増加を実感していることを報告している。

ディーセント・ワーク(SDG8)への貢献も注目される。Wiggins et al. (2018)の研究によれば、サツマイモバリューチェーンの発展は、農村地域での雇用創出と所得向上に寄与している。特に、Glover et al. (2016)はルワンダでの事例研究を通じて、サツマイモ加工産業の発展が若者と女性を中心に約2,000の新規雇用を創出し、農村経済の活性化に貢献していることを報告している。

気候変動対策(SDG13)への貢献について、Aziz et al. (2017)の研究は定量的評価を提供している。彼らのライフサイクルアセスメント分析によれば、サツマイモは主要穀物と比較して単位カロリーあたりの温室効果ガス排出量が約30-40%低く、気候変動緩和に寄与する可能性がある。さらに、Reynolds et al. (2015)は「気候スマートサツマイモ」システムを通じた適応能力強化の重要性を強調し、特に気候変動の影響が深刻と予想される地域での食料システムレジリエンス向上に貢献していることを指摘している。

SDG達成に向けたサツマイモ関連投資の費用対効果も重要なテーマである。Alene et al. (2018)の研究によれば、サツマイモ研究開発への投資の内部収益率は約40-60%と極めて高く、特に貧困削減と栄養改善への貢献を考慮すると、SDGs達成に向けた「高収益投資」と評価できる。具体的に、Low et al. (2017)はオレンジ肉サツマイモ普及プログラムの費用便益分析を行い、1ドルの投資あたり約10-12ドルの社会経済的便益が生じることを報告している。

政策統合と制度的連携の重要性も指摘されている。Thiele et al. (2017)の研究によれば、SDGs達成に向けたサツマイモの貢献を最大化するためには、農業政策、栄養政策、気候変動政策などの統合的アプローチが不可欠である。具体的に、Jenkins et al. (2018)はケニアとウガンダでの政策主流化プロセスを分析し、「ワンヘルス」アプローチによる省庁間連携がプログラムの効果と持続性を高めていることを報告している。

モニタリングと評価フレームワークの開発も進んでいる。FAO (2020)のレポートでは、サツマイモを含むルートクロップのSDGs貢献を評価するための指標体系が提案されている。特に、Petsakos et al. (2019)はサツマイモ介入のSDGs貢献を評価するための「マルチディメンショナル・インパクト・アセスメント」フレームワークを開発し、直接的・間接的効果の包括的評価を可能にしている。

市民社会と民間セクターの役割も重要である。Glover & Jones (2019)の研究によれば、NGOや市民団体を通じたアドボカシー活動が政策環境の改善と資源動員に貢献している。また、Rajendran et al. (2017)は民間企業の参画がサツマイモバリューチェーンの持続性と規模拡大に不可欠であることを指摘し、特に中小企業向けの支援プログラムの重要性を強調している。

最新の研究動向として、Low et al. (2022)は「SDG相乗効果アプローチ」の概念化と実践例を提供している。このアプローチでは、サツマイモを基盤とした統合的食料システム介入を通じて、複数のSDGsへの同時貢献を目指している。また、Heck et al. (2021)は「コロナ後の世界再建」におけるサツマイモの戦略的役割を分析し、「ビルド・バック・ベター」の文脈でのSDGs達成への貢献可能性を示している。

7. 社会経済的インパクト評価と将来展望

サツマイモを基盤とした食料安全保障強化プログラムの効果を適切に評価し、将来の展望を描くためには、包括的な社会経済的インパクト評価が不可欠である。特に、家計レベルの食料確保状況、栄養改善効果、所得向上、ジェンダー平等、環境影響などの多面的側面を統合的に評価することが重要である。サツマイモの総合的インパクト評価手法と将来シナリオ分析の最新動向を理解することは、効果的な政策立案と資源配分において重要な意義を持つ。

サツマイモ介入のインパクト評価手法について、de Brauw et al. (2018)の研究は重要な方法論的枠組みを提供している。彼らによれば、サツマイモのような多面的効果を持つ作物の評価には、従来の収量・生産性指標だけでなく、栄養、健康、ジェンダー、環境などを含む「マルチディメンショナル・フレームワーク」が不可欠である。特に、Gilligan & Low (2019)はランダム化比較試験(RCT)と質的調査を組み合わせた「混合研究法」アプローチの有効性を強調し、これによりプログラムの効果だけでなく、その作用メカニズムと文脈依存性も把握できることを示している。

栄養・健康面でのインパクト評価について、Hotz et al. (2012)のウガンダでの研究は包括的なエビデンスを提供している。彼らのRCTによる評価では、オレンジ肉サツマイモの導入により、介入群の子どものビタミンA摂取量が対照群に比べて約2倍に増加し、血清レチノール値の有意な改善が確認された。さらに、Low et al. (2017)のモザンビークでの長期追跡調査によれば、介入終了3年後においても、対象世帯の約61%がオレンジ肉サツマイモの栽培を継続しており、栄養改善効果の持続性が確認されている。

経済的インパクトについて、Rajendran et al. (2017)の研究は重要な知見を提供している。彼らの分析によれば、サツマイモ生産・加工・販売への参画により、アフリカ7カ国の対象世帯の年間純所得が平均して220-280ドル増加(基準値の約35-45%増)したことが確認されている。特に、Wiggins et al. (2018)はナイジェリアでの事例研究を通じて、商業的サツマイモ生産者の収益性(費用便益比)が従来の主食作物より約40-50%高いことを報告している。

ジェンダー平等へのインパクトも重要な評価対象である。Mudege et al. (2019)の研究によれば、ジェンダー視点を統合したサツマイモプログラムにより、女性の資産所有(55%増)、金融アクセス(43%増)、意思決定参加(38%増)などの指標で有意な改善が観察されている。特に、Maindi et al. (2021)はケニアでの調査から、オレンジ肉サツマイモビジネスに参画した女性の約70%が家庭内での発言力増加を実感していることを報告している。

環境面でのインパクト評価も進展している。Aziz et al. (2017)の研究では、ライフサイクルアセスメントを用いたサツマイモ生産システムの環境影響分析が行われ、単位カロリー生産あたりの温室効果ガス排出量、水消費量、土地利用面積などが主要穀物より低いことが示されている。さらに、Reynolds et al. (2015)は「気候スマートサツマイモ」システムの導入により、水利用効率が約25-30%向上し、土壌炭素貯留が増加することを報告している。

包括的な費用便益分析も重要なテーマである。Gilligan et al. (2014)の研究では、ウガンダでのオレンジ肉サツマイモプログラムの社会経済的収益率が分析され、栄養・健康改善効果も貨幣価値換算した場合、投資収益率が約32-38%に達することが示されている。同様に、Alene et al. (2018)はアフリカ全体でのサツマイモ研究開発投資の内部収益率を約40-60%と推定し、これが教育や保健など他の公共投資と比較しても極めて高い値であることを指摘している。

プログラム介入プロセスの評価も重要である。Thiele et al. (2017)は「参加型プロセス評価」の枠組みを用いて、アフリカ7カ国でのサツマイモ普及プログラムの実施プロセスを詳細に分析し、成功要因として(1)地域の食文化への適応、(2)女性の参加促進、(3)複数セクターの連携、(4)プライベートセクターの関与などを特定している。

将来展望に関して、Petsakos et al. (2019)のモデル分析は重要な知見を提供している。彼らのDREAM(Dynamic Research EvaluAtion for Management)モデルによる予測では、現在の研究開発投資トレンドが継続した場合、2030年までにサツマイモの世界生産量は約1.5倍に増加し、特にアフリカと東南アジアでの拡大が顕著になると推定されている。また、Nedumaran et al. (2022)の気候変動シナリオ分析によれば、適切な適応策(耐性品種の開発・普及など)が実施された場合、2050年の気候条件下でもサツマイモの生産潜在力は維持・拡大できる可能性が示されている。

市場展望もインパクト評価の重要な側面である。Glover et al. (2019)の市場分析によれば、都市化と中間層の拡大に伴い、アフリカと東南アジアでのサツマイモ加工食品市場は2030年までに年率約8-10%で成長すると予測されている。この成長の背景として、Mendesz (2020)は都市消費者の健康志向と利便性志向の高まりを指摘し、特に栄養強化サツマイモ製品(スナック、ペースト、フレークなど)の需要増加が見込まれることを報告している。

政策シナリオ分析も注目される。Dorward et al. (2018)の研究では、異なる政策シナリオ(研究開発投資拡大、インフラ整備、市場自由化など)のサツマイモセクターへのインパクトが分析され、特に研究開発投資と市場アクセス改善の組み合わせが最も高い費用対効果を示すことが明らかにされている。具体的に、Alston et al. (2020)はサツマイモ研究への追加投資1ドルあたり約9-12ドルの社会経済的リターンが見込まれることを報告している。

最新の研究動向として、Low et al. (2022)は「スケーリング・レディネス評価」の概念と方法論を提案している。この枠組みでは、サツマイモを基盤とした食料安全保障強化イノベーションの拡大可能性を、技術的成熟度、供給チェーン準備状況、制度環境、資金調達メカニズムなどの観点から包括的に評価する。また、Moyo et al. (2022)は「アフリカ・サツマイモ・イニシアチブ2030」の長期戦略ビジョンを提示し、食料安全保障、栄養改善、気候変動対応の統合的アプローチを通じて、2030年までに1,500万世帯への裨益を目指している。

8. 国際連携と政策提言

世界の食料安全保障におけるサツマイモの戦略的潜在力を最大化するためには、国際的な連携強化と効果的な政策枠組みの構築が不可欠である。特に、研究開発のグローバルネットワーク強化、技術・知識移転の促進、公共投資の最適化、民間セクター参入促進などを統合的に推進することが重要である。サツマイモを通じた食料安全保障強化のための国際連携の現状と課題、そして将来に向けた政策提言を理解することは、グローバルな食料政策の発展において重要な意義を持つ。

サツマイモ研究開発の国際連携について、Heck et al. (2020)の研究は包括的な分析を提供している。彼らの評価によれば、国際イモ類センター(CIP)を中心とした「スウィートポテト・フォー・プロフィット・アンド・ヘルス・イニシアチブ」(SPHI)は、過去10年間でアフリカ15カ国、アジア8カ国での研究開発協力を推進し、100以上の改良品種開発と普及に貢献してきた。特に、Grüneberg et al. (2019)は「スピードブリーディング」手法の国際的普及により、品種開発期間が従来の8-10年から4-5年に短縮されたことを報告している。

南南協力の重要性も指摘されている。Moyo et al. (2020)の研究によれば、アフリカ諸国間の遺伝資源共有と技術交流が、地域特有の課題(乾燥耐性、ウイルス抵抗性など)に対応した品種開発を加速している。具体的に、Mwanga et al. (2017)はウガンダで開発された「NASPOT」シリーズ品種がケニア、タンザニア、ルワンダなど近隣国に急速に普及し、地域全体の生産性向上に貢献していることを報告している。

国際資金メカニズムも重要なテーマである。Low et al. (2020)の分析によれば、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、IFAD、USAID、DFIDなどのドナーによるサツマイモ研究開発への投資は過去20年間で約5億ドルに達し、特にアフリカでのオレンジ肉サツマイモ普及に大きく貢献してきた。これらの投資の社会経済的リターンについて、Alene et al. (2018)は内部収益率が約40-60%と極めて高く、開発援助の「ベストバイ」の一つであると評価している。

国際的な政策枠組みとの連携も進展している。Petsakos et al. (2019)の研究によれば、サツマイモを通じた食料安全保障強化は、SDGs、パリ協定、アフリカ連合のマラボ宣言など複数の国際的枠組みとの整合性が高い。特に、Thiele et al. (2020)は「マラボ宣言」の目標(農業生産性向上、飢餓撲滅、貧困削減など)とサツマイモ普及プログラムの高い親和性を示し、アフリカ各国の農業投資計画(NAIP)への統合が進んでいることを報告している。

効果的な政策設計に向けた科学的エビデンスの重要性も強調されている。de Brauw et al. (2018)の研究によれば、栄養改善効果を最大化するためには、農業政策と栄養政策の統合が不可欠であり、特に「農業-栄養パスウェイ」に基づいた政策設計の有効性が実証されている。具体的に、Jenkins et al. (2018)はケニアとウガンダでの政策主流化プロセスを分析し、科学的エビデンスに基づく「政策ブリーフ」が政策立案者の意思決定に効果的に影響を与えたことを報告している。

公的投資の最適化についても重要な知見が提供されている。Alston et al. (2020)の研究によれば、サツマイモ研究開発への公的投資は高い社会的リターンをもたらすが、その効果を最大化するためには、(1)育種、(2)栽培技術、(3)収穫後技術、(4)普及システムへのバランスの取れた資源配分が重要である。特に、Mwanga et al. (2017)は育種プログラムへの集中投資が「ボトルネック解消」につながり、普及システムの効率性向上に寄与することを指摘している。

民間セクターの役割と政策的支援も注目される。Glover et al. (2019)の研究によれば、サツマイモバリューチェーン発展には民間投資の拡大が不可欠であり、これを促進するための政策的介入(リスク軽減メカニズム、技術支援、市場情報提供など)の重要性が高まっている。具体的に、Rajendran et al. (2017)はアフリカ7カ国での「サツマイモ・サプライチェーン・ファイナンス」イニシアチブが、150以上の中小企業の参入を促進し、バリューチェーンの効率性向上に貢献していることを報告している。

気候変動政策との統合も重要なテーマである。Reynolds et al. (2015)の研究によれば、「気候スマート」サツマイモシステムは適応と緩和の両面で効果を持つため、気候変動政策との連携強化が重要である。特に、Lal et al. (2019)は国家気候変動適応計画(NAP)へのサツマイモ生産システムの統合が、特に気候脆弱性の高い地域での食料安全保障戦略として効果的であることを指摘している。

能力開発と制度強化も政策提言の重要な側面である。Heck et al. (2020)の研究によれば、サツマイモ研究開発の持続性を確保するためには、各国の能力強化と制度整備が不可欠である。具体的に、Zeller et al. (2018)は「サツマイモ育種アクセラレーター」プログラムが、アフリカと東南アジアの15カ国で100名以上の若手育種家を育成し、各国の育種プログラム強化に貢献していることを報告している。

国際的な知識共有プラットフォームの発展も注目される。Moyo et al. (2022)の研究によれば、「スウィートポテト・ノレッジ・ポータル」などのデジタルプラットフォームが、研究者、政策立案者、実務者間の知識共有と協働を促進し、効果的な実践の普及に貢献している。特に、Low et al. (2022)は「サウス・サウス・ラーニング・プラットフォーム」の開発により、アフリカ諸国間の経験共有と相互学習が促進されていることを報告している。

具体的な政策提言として、Thiele et al. (2020)は以下の優先事項を示している:

  1. 研究開発投資の持続的確保と戦略的配分
  2. 栄養政策とフードシステム政策の統合
  3. 気候変動適応策としてのサツマイモ生産システム普及
  4. 民間セクター参入促進のための制度環境整備
  5. デジタル技術活用による知識・技術普及の効率化
  6. 若手研究者・普及員の能力開発プログラム強化

最新の研究動向として、Moyo et al. (2022)は「アフリカ・サツマイモ・イニシアチブ2030」の国際協力フレームワークを提案し、国際機関、地域機関、国家機関、民間セクター、市民社会の多層的連携による包括的アプローチを提唱している。また、Shikuku et al. (2023)はデジタル時代の「インクルーシブ・アグリカルチャー・イノベーション・システム」の概念化と政策応用について報告し、サツマイモを含むルートクロップのイノベーション普及における新たな国際協力パラダイムを提示している。

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This completes the references section for Chapter 11 on the strategic positioning of sweet potatoes in global food security.

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