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睡眠とGABAの関係|オレキシンとの拮抗作用

第4部:睡眠の神経科学とGABA – 脳を休ませるスイッチの解明

睡眠の神経回路基盤:概観

睡眠は単なる休息状態ではなく、能動的かつ高度に調節された脳の機能状態である。この普遍的生理現象は、生存に不可欠でありながら、その根本的なメカニズムの解明は比較的最近まで進んでいなかった。現代の神経科学は、睡眠の制御における複数の脳領域とその相互作用、特にGABA作動性神経伝達の中心的役割を明らかにしつつある。

睡眠・覚醒状態の神経生物学的基盤に関する初期の洞察は、フォン・エコノモ脳炎(1916-1927年)の臨床観察に端を発する。この疾患では、視床下部前部の病変が過眠を引き起こす一方、後部の病変が不眠を引き起こすことが観察された(Saper et al., 2001)。この観察は、視床下部に睡眠と覚醒を制御する中枢が存在することを示唆する最初の重要な証拠となった。

現代の睡眠神経科学は、「フリップ・フロップ」スイッチモデルを中心に構築されている。このモデルは睡眠と覚醒の急速な移行と状態の安定性を説明するものである。Saper et al.(2010)の総説によれば、このスイッチは相互抑制的な神経回路から成り、睡眠促進系と覚醒促進系が互いを抑制することで、中間的な状態を回避し、睡眠または覚醒の安定した状態を維持する。

このスイッチの「睡眠側」を担うのが、視床下部前部の視索前野(POA)に位置するGABA作動性ニューロン群である。特に、腹外側視索前野(VLPO)と中央性視索前野(MnPO)が重要な役割を果たす。Sherin et al.(1996)の研究は、VLPOニューロンがGABAとガラニンを共発現し、これらが覚醒系を担う脳幹・視床下部核に直接投射することを示した。この発見は、睡眠開始における積極的な覚醒抑制の概念を確立する上で画期的なものであった。

「覚醒側」は複数の神経核から構成される。主なものとして、青斑核(ノルアドレナリン作動性)、背側縫線核(セロトニン作動性)、結節乳頭体核(ヒスタミン作動性)、基底前脳(アセチルコリン作動性)、そして外側視床下部/視床下部外側野のオレキシン(ヒポクレチン)ニューロンがある(Brown et al., 2012)。これらの核は「上行性網様体賦活系」(ARAS)の一部を形成し、大脳皮質の活性化と覚醒維持に不可欠である。

GABAの役割は、この睡眠・覚醒スイッチの両側で多層的である。Szymusiak & McGinty(2008)の研究は、VLPO内のGABA作動性ニューロンが睡眠中に最も活発に発火することを示した。これらのニューロンは、覚醒系のノルアドレナリン作動性、セロトニン作動性、ヒスタミン作動性およびオレキシン作動性ニューロンに抑制性投射を送り、覚醒系の不活性化を促進する。

さらに、GABA作動性介在ニューロンも覚醒系核内に存在し、局所的な調節を担う。Herrera et al.(2016)は、青斑核内のGABA作動性ニューロンが睡眠中にノルアドレナリン作動性ニューロンを抑制し、レム睡眠中の筋弛緩に寄与することを示した。

睡眠・覚醒制御における第三の要素として、視交叉上核(SCN)が主導する概日制御系がある。SCNはGABA作動性ニューロンを主体とし、約24時間周期の内因性リズムを生成する。Aston-Jones et al.(2001)によれば、SCNは睡眠促進系と覚醒促進系の両方に投射し、これらの活動を時刻依存的に調節することで、睡眠・覚醒リズムを環境の明暗サイクルと同調させる。

これらの基本的神経回路が、睡眠の開始、維持、そして覚醒への移行を精密に制御している。次節以降では、この複雑なシステムにおけるGABA作動性メカニズムをより詳細に検討していく。

GABA作動性睡眠促進ニューロン:VLPOとその特性

腹外側視索前野(VLPO)は、睡眠開始と維持における中心的役割を担う神経核として広く認識されている。この小さな神経核群の特性と機能の理解は、睡眠の神経生物学における重要なブレークスルーをもたらした。

VLPOニューロンの解剖学的・神経化学的特徴は、その機能を理解する上で重要である。Gaus et al.(2002)の研究によれば、VLPOは「コア」と「拡張部」から構成され、コアは密集したニューロン群であるのに対し、拡張部はより拡散したニューロン分布を示す。これらのニューロンの大部分(約80%)はGABAとガラニンを共発現し、これが睡眠促進ニューロンの特徴的マーカーとなっている。

VLPOからの投射は、睡眠・覚醒制御における中心的役割を反映している。Lu et al.(2000)の研究は、VLPOが主要な覚醒促進核に直接投射することを示した。具体的には、青斑核(LC)、背側縫線核(DRN)、結節乳頭体核(TMN)、基底前脳(BF)、そして外側視床下部(LH)に抑制性投射を送る。これらはすべて、上行性網様体賦活系(ARAS)の主要構成要素である。この解剖学的配置により、VLPOは「主要覚醒スイッチ」を積極的に抑制する理想的な位置にある。

VLPO自体の活動調節も複雑である。これらのニューロンは特徴的な電気生理学的特性を持ち、Chamberlin et al.(2003)の研究では「睡眠活性型ニューロン」が同定された。これらのニューロンはノルアドレナリンとアセチルコリンによって抑制され、セロトニンには二相性応答(低濃度では抑制、高濃度では興奮)を示す。この特性により、覚醒時には抑制され、覚醒系の活動低下に伴い解放(脱抑制)されると考えられている。

VLPOの活動と睡眠の関連は複数の実験で確認されている。Szymusiak et al.(1998)は、自然睡眠中にVLPOニューロンの活動が増加することを示した。特に、睡眠の深さ(徐波睡眠の強度)とVLPOニューロンの発火率には正の相関がある。また、睡眠断片化や断眠後のリバウンド睡眠でもVLPO活動の増加が見られる。

VLPOのGABA作動性ニューロンは、恒常性睡眠駆動(ホメオスタティック睡眠圧)の媒介者として機能する可能性がある。Porkka-Heiskanen & Kalinchuk(2011)の研究は、覚醒延長中に蓄積するアデノシンがVLPOニューロンを直接活性化することを示した。具体的には、アデノシンA2A受容体の活性化がVLPOニューロンの発火を促進し、これが睡眠圧の増加と関連すると考えられている。

また、VLPOの活動は体温調節とも密接に関連している。Kumar et al.(2012)は、温熱受容ニューロンがVLPOに存在し、これらが体温上昇に応答して活性化されることを示した。この機構は、体温が自然に低下する夕方から夜間にかけての睡眠促進と関連する可能性がある。

VLPOの機能障害は睡眠障害と直接関連する。Lu et al.(2000)の研究では、VLPO損傷が重度の不眠を引き起こすことが示された。また、加齢に伴うVLPOニューロンの減少が、高齢者における睡眠の質低下の一因である可能性が示唆されている(Mander et al., 2017)。

近年の研究では、VLPOのサブ集団の特性も明らかになりつつある。Chung et al.(2017)は、異なるVLPOニューロン集団が特定の睡眠状態(ノンレム vs レム)を選択的に促進することを示した。また、VLPO以外の視索前野領域(MnPOなど)にも睡眠活性型ニューロンが存在し、これらが協調して睡眠の開始と維持を制御する可能性が示唆されている。

GABA系と睡眠段階の調節:ノンレム睡眠とレム睡眠

睡眠は均質な状態ではなく、ノンレム睡眠(徐波睡眠)とレム睡眠(急速眼球運動睡眠)という生理学的に異なる二つの主要状態から構成される。これらの状態間の移行と維持にGABA系がどのように関与するかは、睡眠の神経科学における中心的課題である。

ノンレム睡眠の発生と維持におけるGABAの役割は多面的である。Steriade(2006)の先駆的研究によれば、ノンレム睡眠の特徴である同期性脳波活動(徐波、紡錘波)は、視床-皮質ネットワークにおけるGABA作動性抑制が基盤となっている。特に、視床網様核(TRN)のGABA作動性ニューロンが視床皮質ニューロンを周期的に抑制することで、徐波(0.5-4Hz)や紡錘波(12-15Hz)などの特徴的なリズム活動が生成される。

ノンレム睡眠の深さはGABA濃度と直接関連する。Vanini et al.(2012)の微小透析研究は、ノンレム睡眠の深度が増すにつれて、前頭皮質や基底前脳のGABA濃度が増加することを示した。特に、デルタ波パワー(徐波睡眠の指標)とGABA濃度の間には強い正の相関がある。この関係は、GABA作動性睡眠薬によるデルタ波の増強効果とも一致する。

レム睡眠の調節におけるGABAの役割はより複雑である。McCarley(2007)の「相互抑制モデル」によれば、レム睡眠と非レム睡眠はそれぞれ特異的なニューロン群によって駆動され、これらが相互抑制関係にある。橋被蓋のコリン作動性ニューロン(レムオン細胞)がレム睡眠を促進する一方、縫線核や青斑核のモノアミン作動性ニューロン(レムオフ細胞)がそれを抑制する。

このシステムにおけるGABAの役割について、Weber et al.(2018)は橋被蓋背外側部のGABA作動性ニューロンがレム睡眠の開始と維持に必須であることを示した。これらのニューロンは、レム睡眠中に選択的に活性化され、縫線核・青斑核のモノアミン作動性ニューロンを抑制する。この抑制により、筋緊張低下(筋弛緩)と急速眼球運動という特徴的なレム睡眠の要素が可能となる。

GABA系の薬理学的操作も睡眠段階に特異的な効果をもたらす。Lancel(1999)の総説によれば、GABAA受容体作動薬は主にノンレム睡眠のステージ2を延長し、デルタ波を減少させる(浅いノンレム睡眠を促進する)一方、GABAB受容体作動薬はデルタ波を増強する(深いノンレム睡眠を促進する)。レム睡眠に対する効果はより変動的だが、高用量のGABAA受容体作動薬はレム睡眠を抑制する傾向がある。

睡眠段階間の移行におけるGABA系の役割も注目される。Saper et al.(2010)は、睡眠状態間の急速な移行が「フリップ・フロップ」スイッチの原理で説明できることを提案した。この切り替えにはGABA作動性抑制が不可欠であり、一方の状態に関連するニューロン群が活性化されると、それが他方のニューロン群を抑制することで状態の安定性が保たれる。

特に興味深いのは、これらの睡眠制御ニューロンが発達中にどのように形成されるかである。Hayashi et al.(2018)は、乳児期の睡眠パターンが大人と異なる理由の一つとして、GABA作動性睡眠促進回路の未熟性を挙げている。生後初期には、GABAが興奮性に作用する期間があり、これが新生児特有の睡眠パターンと関連している可能性がある。

代謝産物もGABA系を介して睡眠段階に影響を与える。Monti et al.(2018)の研究は、乳酸、ピルビン酸などの代謝産物がGABA合成に寄与し、これが代謝状態と睡眠パターンの関連を説明する一因となる可能性を示した。特に、ケトジェニックダイエットがてんかんとともに睡眠の質を改善する効果は、部分的にGABA合成増強に起因する可能性がある。

また、睡眠段階特異的なGABA作動性ニューロンの発見も進んでいる。Yu et al.(2019)は、視床下部のメラニン凝集ホルモン(MCH)産生ニューロン(多くはGABAも共発現)がレム睡眠に選択的に活性化されることを示した。これらのニューロンの操作によりレム睡眠を選択的に増減できることから、レム睡眠の調節に特化した回路の存在が示唆されている。

視床皮質系における睡眠オシレーションとGABA:徐波と紡錘波

睡眠中、特にノンレム睡眠において、脳は多様な振動性活動(オシレーション)を示す。これらのオシレーションには、徐波(0.5-4Hz)、紡錘波(12-15Hz)、デルタ波(1-4Hz)などがある。これらの睡眠オシレーションの生成と調節において、GABA作動性神経伝達が中心的役割を果たしている。

徐波オシレーション(slow oscillation)は、ノンレム睡眠の中でも最も特徴的な脳波パターンである。Neske(2016)の総説によれば、徐波は主に新皮質に起源を持ち、広範な皮質ニューロンの「アップ状態」(脱分極と高頻度発火)と「ダウン状態」(過分極と発火停止)の交替として現れる。この現象の生成において、皮質内GABA作動性インターニューロンが重要な役割を果たす。

特に、皮質のパルブアルブミン(PV)陽性インターニューロンは徐波生成の鍵である。Zucca et al.(2019)は、PV陽性インターニューロンの活動がアップ状態からダウン状態への移行を促進することを示した。具体的には、アップ状態の持続中にPV陽性インターニューロンの発火が漸増し、臨界点に達すると広範な錐体細胞の同期的抑制(ダウン状態)を引き起こす。

一方、紡錘波はより高い周波数(12-15Hz)の振動であり、主に視床に起源を持つ。視床網様核(TRN)のGABA作動性ニューロンが紡錘波生成の中心的要素である。Clawson et al.(2016)は、TRNニューロンが内因性のバースト発火特性を持ち、これが視床皮質(TC)ニューロンの周期的抑制を引き起こすことを示した。この抑制解除後、TCニューロンは反跳性発火(リバウンドスパイク)を示し、これが紡錘波の基本周期を形成する。

この過程におけるGABA受容体サブタイプの役割も重要である。Herd et al.(2013)の研究は、GABAA受容体のα3サブユニットがTRNニューロンに豊富に発現し、紡錘波生成に不可欠であることを示した。GABAA受容体α3サブユニットのノックアウトマウスでは、紡錘波活動が著しく減少する。

GABAB受容体も視床皮質リズム生成に重要な役割を果たす。GABAB受容体は視床網様核ニューロン間の相互抑制に関与し、これが紡錘波の同期化を促進する。Ulrich & Huguenard(1996)は、GABAB受容体作動薬(バクロフェン)が徐波と紡錘波の結合を増強することを示した。この結合は、記憶固定化における睡眠の役割と関連する可能性がある。

徐波と紡錘波の時間的結合(coupling)は睡眠の重要な特徴である。Staresina et al.(2015)の研究は、徐波の上向き相において紡錘波が発生する傾向があり、これが記憶固定化の電気生理学的基盤となることを示唆している。この結合現象において、GABA作動性インターニューロンと視床皮質フィードバックループが調整役を果たす。

睡眠オシレーションの恒常性調節にもGABA系が関与している。Tononi & Cirelli(2014)のシナプスホメオスタシス仮説(SHY)によれば、睡眠中(特に徐波睡眠中)に皮質シナプス強度の全般的な減弱(ダウンスケーリング)が生じる。このプロセスには、GABA作動性伝達の増強が寄与しており、覚醒中に強化されたシナプスの選択的な維持と弱いシナプスの減弱を可能にしている。

年齢によるオシレーション変化もGABA系と関連する。Mander et al.(2017)は、加齢に伴う徐波活動の減少が前頭前皮質のGABA作動性インターニューロン、特にPV陽性細胞の機能低下と関連することを示した。これが高齢者における睡眠の質低下と記憶固定化の障害の背景となる可能性がある。

睡眠オシレーションは病的状態においても重要な意味を持つ。ある種のてんかん発作と睡眠紡錘波には電気生理学的類似性がある。Beenhakker & Huguenard(2009)は、視床網様核のGABA作動性ニューロンネットワークの過同期化が棘波放電(spike-wave discharge)を引き起こし、これが欠神発作の基盤となることを示した。このことは、生理的な睡眠オシレーションと病的な発作活動の境界が流動的であることを示唆している。

覚醒系に対するGABA作動性抑制:脳幹覚醒系の制御

睡眠の発生と維持には、覚醒促進系の抑制が不可欠である。この過程を担うのが、視索前野から脳幹および視床下部の覚醒中枢に対するGABA作動性投射である。この抑制性制御系の機能と特性を理解することは、睡眠の神経機構解明において極めて重要である。

覚醒系の核心をなすのは、上行性網様体賦活系(ARAS)である。Saper et al.(2005)によれば、このシステムは複数の神経核から構成され、それぞれが特徴的な神経伝達物質を用いる:青斑核(LC、ノルアドレナリン)、背側縫線核(DR、セロトニン)、結節乳頭体核(TMN、ヒスタミン)、上行性アセチルコリン系(PPT/LDT、アセチルコリン)、および外側視床下部のオレキシン(ヒポクレチン)ニューロンである。これらは協調して大脳皮質の活性化と覚醒状態の維持に寄与する。

VLPOからのGABA作動性投射は、これらの覚醒中枢に直接的な抑制を提供する。Sherin et al.(1998)の研究は、VLPOからTMN、LC、DRへの直接的なGABA/ガラニン作動性投射を示した。これらの投射は解剖学的に特異的であり、主にモノアミン作動性ニューロンを標的とする。この抑制が睡眠開始時に覚醒系を「オフ」にする主要なメカニズムとして機能する。

特に重要なのは、ヒスタミン作動性TMNに対する抑制である。TMNは皮質活性化と覚醒維持において中心的役割を果たす。Chung et al.(2017)の研究は、VLPO→TMN投射が睡眠の開始と維持に不可欠であることを示した。この経路を選択的に遮断すると、睡眠の断片化と総睡眠時間の減少が生じる。

青斑核(LC)に対するGABA作動性制御も重層的である。Carter et al.(2010)によれば、LCノルアドレナリン作動性ニューロンは複数のソースからのGABA作動性入力を受ける:1)VLPOからの遠隔投射、2)局所GABA作動性介在ニューロン、3)前部帯状回などの皮質領域からの下行性投射。これらの多層的制御が、ノルアドレナリン系の精緻な調節を可能にしている。

特に注目すべきは、LC内の局所GABA作動性ニューロンの役割である。これらはレム睡眠中に特に活性化され、ノルアドレナリン作動性ニューロンを強力に抑制する。Aston-Jones & Cohen(2005)は、この抑制がレム睡眠中の筋弛緩と急速眼球運動を可能にすると同時に、夢見体験に関連する皮質活性化を維持することを示唆している。

GABA作動性睡眠促進ニューロンは、哺乳類だけでなくショウジョウバエなどの無脊椎動物でも保存されている。Donlea et al.(2011)は、ショウジョウバエの睡眠様状態がGABA作動性ニューロンによって促進されることを示し、睡眠の神経機構における進化的保存性を示唆している。

覚醒系が受けるGABA作動性抑制の中断は、様々な睡眠障害の基盤となる。不眠症の少なくとも一部は、この抑制系の機能不全と関連している可能性がある。Nofzinger et al.(2004)のPETイメージング研究は、不眠症患者において睡眠中の大脳皮質と視床下部の代謝低下が不十分であることを示し、これが覚醒系の持続的活性化と関連することを示唆している。

GABA作動性伝達による覚醒系抑制の理解は、新しい睡眠薬開発の基盤となる。Brown et al.(2012)は、オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサントなど)やヒスタミンH1受容体拮抗薬(ドキセピンなど)などの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が、覚醒系の特定構成要素を標的とすることで、より生理的な睡眠を誘導できる可能性を示唆している。

また、覚醒系と睡眠促進系の相対的バランスは、個体の「睡眠フェノタイプ」(睡眠習慣や睡眠必要量など)の決定に寄与する可能性がある。Mignot(2008)の総説によれば、短時間睡眠者と長時間睡眠者の違いは、部分的に覚醒系に対するGABA作動性抑制の効率の差に起因する可能性がある。

概日リズムとGABA系の相互作用

睡眠・覚醒サイクルは、恒常性調節(睡眠圧)と概日調節(体内時計)という二つのプロセスによって制御される。視交叉上核(SCN)に位置する概日時計は、GABA作動性神経伝達を介して睡眠・覚醒の時間的パターンを調節している。この概日調節とGABA系の相互作用は、睡眠の時間的組織化において中心的役割を果たす。

SCNは哺乳類の主要な概日ペースメーカーであり、約24時間周期の内因性リズムを生成する。Wagner et al.(1997)の先駆的研究は、SCNニューロンの大多数(約95%)がGABAを主要な神経伝達物質として使用することを示した。この高いGABA発現は、他の視床下部領域と比較しても際立っている。

SCN内におけるGABAの役割は多面的である。Liu & Reppert(2000)の研究によれば、GABA作動性伝達は SCN内での情報伝達、概日リズムの同期化、光によるリズムのリセット、そして他の脳領域への出力シグナルとして機能する。特にSCNニューロン間のGABA作動性相互作用は、このネットワークの同期化に不可欠であり、集団としての安定したリズム生成を可能にしている。

興味深いことに、SCNにおけるGABAの作用は時刻依存的に変化する。DeWoskin et al.(2015)の研究は、昼間にはGABAが興奮性に作用する一方、夜間には抑制性に作用することを示した。この時刻依存的なスイッチは、塩化物トランスポーター(NKCC1とKCC2)の発現バランスの日内変動に起因し、これが昼夜でのGABAの極性変化を引き起こす。この特異的な性質が、SCNの時刻情報エンコーディング能力を高めている可能性がある。

SCNはGABA作動性投射を介して、睡眠・覚醒調節に関わる多様な脳領域に時刻情報を伝達する。Hermes et al.(2009)は、SCNからVLPO、外側視床下部(LH)、視床室傍核などへの直接的なGABA作動性投射を示した。これらの投射により、SCNは睡眠促進系と覚醒促進系の活動を時刻依存的に調節し、睡眠・覚醒の適切なタイミングを保証する。

概日リズムと睡眠恒常性の相互作用にもGABAが関与している。Challet(2007)の総説によれば、睡眠圧の蓄積速度自体が概日的に変調され、このプロセスにSCNからのGABA作動性シグナルが寄与している。例えば、活動期(昼間)に蓄積する睡眠圧は、休息期(夜間)よりも速い。この調節により、長時間の安定した覚醒と睡眠が可能になる。

概日リズム障害の多くは、SCNのGABA作動性シグナル伝達の異常と関連する可能性がある。例えば、Jones et al.(2013)の研究は、時差ぼけや交代勤務などの概日リズム障害がSCNのGABA作動性ニューロンの再同期過程の不調和と関連することを示唆している。これは、概日リズム障害に対するGABA作動性薬剤の治療潜在性を示唆するものである。

季節性も概日GABA系に影響を与える。光周期(日照時間)の変化に応じて、SCNのGABA作動性伝達特性も調節される。Myung et al.(2015)は、短日条件下でのSCN GABA伝達の変化が、季節的な行動・生理リズムの調節に寄与することを示した。これが季節性情動障害(SAD)の基盤となる可能性も示唆されている。

概日リズムとGABA系の相互作用は加齢によっても影響を受ける。Hood & Amir(2017)によれば、加齢に伴いSCNのGABA作動性シグナル伝達が変化し、これが高齢者における概日リズムの振幅低下と睡眠の断片化に寄与する可能性がある。具体的には、KCC2/NKCC1比の変化によるGABA応答の極性変化や、GABAA受容体サブユニット構成の変化などが関与している。

GABA作動性睡眠薬も概日系に影響を与える。Turek & Losee-Olson(1986)の研究は、ベンゾジアゼピン系薬が濃度依存的にSCNの光応答を修飾し、これが概日位相の変化をもたらすことを示した。この知見は、睡眠薬の慢性使用が概日リズムの撹乱を引き起こす可能性を示唆している。

栄養状態も概日リズムとGABA系の相互作用に影響する。Challet(2013)の研究によれば、食物摂取のタイミングは末梢時計と脳の一部を再同期させる強力な因子であり、この過程にはGABA作動性シグナル伝達が関与している。時間制限給餌は、SCNから独立した食物同調性振動体(FEO)を活性化し、これがGABA作動性経路を介して睡眠・覚醒パターンに影響を与える。

オレキシン-GABA拮抗作用と睡眠-覚醒制御

外側視床下部(LH)に位置するオレキシン(ヒポクレチン)ニューロンは、覚醒維持において中心的役割を果たし、GABA作動性睡眠促進系との拮抗的相互作用を通じて睡眠-覚醒状態の安定性を保証している。この拮抗システムの理解は、ナルコレプシーなどの睡眠障害の病態解明と治療法開発に重要な洞察をもたらしている。

オレキシンは1998年に二つの独立した研究グループによって同時に発見された神経ペプチドである。de Lecea et al.(1998)はこの物質を「ヒポクレチン」と命名し、Sakurai et al.(1998)は「オレキシン」と命名した。後者の名称がより広く普及している。オレキシンには二つのサブタイプ(オレキシンA、オレキシンB)があり、これらは二つの受容体(OX1R、OX2R)を介して作用する。

オレキシンニューロンの解剖学的分布と投射は、その機能的役割を反映している。Peyron et al.(1998)の研究は、オレキシンニューロンが外側視床下部と視床下部背側領域に限局して分布し、広範な脳領域、特に覚醒調節に関わる脳幹・視床下部領域(LC、DR、TMN、PPT/LDTなど)に投射することを示した。

オレキシンと睡眠障害の関連は、二つの独立したグループによる動物モデル研究から明らかとなった。Chemelli et al.(1999)はオレキシン遺伝子ノックアウトマウスが、Lin et al.(1999)はオレキシン受容体変異イヌが、いずれもナルコレプシー様症状(突発的な筋緊張喪失発作、睡眠-覚醒サイクルの撹乱など)を示すことを報告した。この発見は、オレキシン系がナルコレプシーの病態に直接関連することを示す決定的証拠となった。

ヒトナルコレプシーの原因もオレキシン系の障害であることがNishino et al.(2000)によって確認された。タイプ1ナルコレプシー(情動脱力発作を伴うもの)患者の90%以上で脳脊髄液中のオレキシン濃度が著しく低下しており、これは視床下部オレキシンニューロンの選択的変性に起因すると考えられている。

オレキシンニューロンはGABA作動性入力による強力な制御を受ける。Matsuki et al.(2009)は、VLPOなどの睡眠促進領域からのGABA作動性投射がオレキシンニューロンを直接抑制することを示した。また、局所GABA作動性介在ニューロンもオレキシンニューロンの活動を調節している。この抑制的制御が、睡眠開始時のオレキシン系の不活性化に寄与している。

逆に、オレキシンニューロン自体は複数の領域においてGABA作動性ニューロンの活動を調節する。Xie et al.(2006)の研究は、オレキシンがTMN内のGABA作動性介在ニューロンを抑制することで、ヒスタミン作動性ニューロンに対する脱抑制(抑制の解除)を引き起こすことを示した。また、青斑核や縫線核においても同様のメカニズムが機能している可能性がある。

オレキシン-GABA相互作用の日内変動も重要である。Lee et al.(2005)は、覚醒時には外側視床下部のグルタミン酸入力がオレキシンニューロンを活性化する一方、睡眠時にはGABA入力が優位となり抑制が生じることを示した。この日内リズムには、SCNからの間接的な入力が関与している可能性がある。

睡眠-覚醒状態間の安定的移行におけるオレキシン-GABA相互作用の役割も注目される。Saper et al.(2010)の「フリップ・フロップ」モデルによれば、オレキシン系は睡眠促進系(VLPO)と覚醒促進系(LC、TMN、DR)という相互抑制的な回路に安定性を付与する役割を担う。オレキシンの欠損により、この相互抑制回路の安定性が低下し、状態間の急速かつ不適切な移行(ナルコレプシーにおける睡眠発作や情動脱力発作)が生じる。

薬理学的には、GABAA受容体作動薬とオレキシン受容体拮抗薬は異なる作用メカニズムで睡眠を誘導する。Scammell et al.(2019)によれば、GABAA受容体作動薬は大脳皮質を含む広範な中枢神経系を抑制することで催眠作用を示す一方、オレキシン受容体拮抗薬(DORAs)は選択的に覚醒系を抑制することで、より生理的な睡眠を促進する可能性がある。

実際、DORAsの代表例であるスボレキサント(Belsomra®)は、2014年に米国FDAに承認された新しいタイプの不眠症治療薬である。Rhyne & Anderson(2015)のレビューによれば、スボレキサントはベンゾジアゼピン系薬と比較して、認知機能低下や筋弛緩などの副作用が少なく、依存性も低いとされる。

オレキシン-GABA相互作用は情動調節にも関与する。Johnson et al.(2012)の研究は、ストレス応答におけるオレキシンニューロンの活性化が、不安や恐怖関連行動に影響を与えることを示した。この過程では、扁桃体やBNSTなどの情動関連領域におけるGABA作動性回路とオレキシン系の相互作用が重要である。

発達的観点からも、オレキシン-GABA相互作用は重要である。Campbell et al.(2015)の研究は、生後発達期におけるオレキシン系と睡眠GABA系の成熟過程が協調することを示した。この発達的相互作用の障害が、小児ナルコレプシーに特徴的な症状プロファイルの一因となる可能性がある。

睡眠薬の作用機序:GABA系への薬理学的介入

睡眠障害、特に不眠症は現代社会において極めて一般的な健康問題である。その治療において、GABA系を標的とした薬剤が主要な役割を果たしてきた。これらの薬剤の作用機序を理解することは、その臨床的有効性と限界を把握する上で不可欠である。

ベンゾジアゼピン系薬は長年にわたり不眠症治療の中心的存在であった。Rudolph & Knoflach(2011)の総説によれば、これらの薬剤はGABAA受容体上の特異的結合部位(α/γサブユニット界面に位置する)に結合し、GABA結合時の塩化物イオンチャネル開口頻度を増加させる(ポジティブアロステリック調節)。この作用により、神経細胞の過分極と興奮性低下がもたらされる。

ベンゾジアゼピン系薬の睡眠構造への影響は複雑である。Lancel(1999)のレビューによれば、これらの薬剤は主に入眠潜時の短縮、総睡眠時間の延長、中途覚醒の減少をもたらす。しかし同時に、睡眠構造の変化(徐波睡眠の減少、紡錘波活動の増加)と自然睡眠からの逸脱も引き起こす。これらの変化は、GABAA受容体の神経解剖学的分布と、異なるサブユニット構成受容体に対する薬剤の作用特性を反映している。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(Z-drugs:ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロンなど)も、GABAA受容体を標的とするが、より選択的なサブユニット特異性を示す。Nutt & Stahl(2010)によれば、これらはα1サブユニット含有GABAA受容体に比較的選択的に作用し、これにより催眠作用と筋弛緩・抗不安作用の分離が一定程度達成される。この選択性により、理論的には自然睡眠に近い睡眠構造が維持されるとされるが、実際にはベンゾジアゼピン系薬との差異は限定的である。

バルビツール酸系薬は、より古い世代の睡眠薬である。Greenblatt et al.(2019)の解説によれば、これらはGABAA受容体のバルビツール酸結合部位(β/αサブユニット界面)に結合し、低濃度ではGABAの作用を増強し、高濃度では直接チャネルを開口させる。この用量依存的な作用特性が、治療閾値と中毒閾値の接近につながり、安全性の問題となる。現在では、主に麻酔薬や抗けいれん薬として限定的に使用されている。

神経ステロイド系睡眠薬も注目されている。最近上市されたブレキサノロン(Brexanolone)はアロプレグナノロンの静脈内投与製剤で、産後うつ病治療薬として承認されているが、その強力な催眠作用も報告されている。Zorumski et al.(2013)によれば、神経ステロイドはGABAA受容体のステロイド結合部位(主に膜貫通領域に位置する)に結合し、特にδサブユニット含有受容体を強力に活性化する。この選択性が、新しい不眠症治療薬開発の端緒となり得る。

メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン、タスメルテオンなど)は、直接的なGABA系作用を持たないが、概日リズム調節に関わるメラトニン系を介して間接的にGABA系に影響を与える可能性がある。Laudon & Frydman-Marom(2014)の研究は、メラトニン受容体活性化がSCNのGABA作動性投射を修飾することで、睡眠促進効果をもたらす可能性を示唆している。

ヒスタミンH1受容体拮抗薬(ドキセピン低用量など)も不眠症治療に用いられる。Krystal et al.(2013)の研究によれば、これらは視床下部結節乳頭体核(TMN)のヒスタミン作動性ニューロン活動を間接的に抑制することで催眠作用を示す。この過程には、TMN内のGABA作動性介在ニューロンを介した調節も関与している可能性がある。

オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント、レンボレキサントなど)は、最も新しいクラスの睡眠薬である。Scammell et al.(2019)によれば、これらは外側視床下部のオレキシンシグナル伝達を阻害することで、覚醒系に対するオレキシンの興奮性作用を遮断する。これにより、VLPO GABA作動性ニューロンからの抑制効果が相対的に増強され、より生理的な睡眠パターンが促進される可能性がある。

GABA系作動薬の依存形成と耐性発現は重要な課題である。Gravielle(2016)の研究は、慢性的なGABAA受容体刺激が受容体のサブユニット構成変化、エンドサイトーシス促進、リン酸化状態変化などを介して耐性を誘導することを示した。この現象が、ベンゾジアゼピン系薬の長期使用における効果減弱と離脱症状の基盤となる。

高齢者における睡眠薬の使用は特に注意が必要である。Mander et al.(2017)によれば、加齢に伴うGABAA受容体サブユニット発現の変化により、ベンゾジアゼピン系薬への感受性が変化する。また、これらの薬剤による認知機能低下と転倒リスクの増加は、高齢者ではより顕著である。

最近の研究動向として、特定のGABAA受容体サブユニットを標的とした新規睡眠薬の開発がある。Atack(2011)のレビューによれば、α2/α3選択的作動薬が不安を軽減しつつ自然な睡眠を促進する可能性がある。また、α5サブユニット含有受容体を標的とした薬剤が、記憶機能に対する影響を最小化しつつ睡眠を促進できる可能性も示唆されている。

睡眠障害におけるGABA系異常:不眠症と過眠症

睡眠障害は神経系における特定の機能不全を反映しており、その多くがGABA系の異常と関連している。不眠症と過眠症に見られるGABA系機能異常の理解は、これらの障害の病態解明と新規治療法開発に重要な洞察をもたらす。

不眠症は最も一般的な睡眠障害であり、夜間の睡眠開始や維持の困難、および日中機能への悪影響を特徴とする。Roth et al.(2007)によれば、一般人口の約10-15%が慢性不眠症に苦しんでいる。この障害のGABA系基盤について、複数のアプローチから研究が進められている。

脳画像研究からは、不眠症患者におけるGABA系異常の証拠が得られている。Plante et al.(2012)のプロトン磁気共鳴分光法(MRS)研究は、慢性不眠症患者の後頭皮質と前部帯状回においてGABA濃度が有意に低下していることを示した。また、この低下の程度が不眠の重症度と相関することも報告されている。

機能的神経画像研究も不眠症におけるGABA系の関与を支持している。Nofzinger et al.(2004)のPET研究は、不眠症患者の睡眠中においても、覚醒維持に関わる脳領域(視床下部、視床、扁桃体など)の代謝活性が持続していることを示した。これは、GABA作動性睡眠促進系による覚醒系の抑制が不十分であることを示唆している。

遺伝学的研究からも、GABA系と不眠症の関連が示唆されている。Ban et al.(2011)の研究は、GABA合成酵素GAD1、GABAA受容体サブユニット(GABRA1、GABRB1、GABRB3など)、GABA輸送体(GAT1)などの遺伝子変異と不眠症リスクの関連を報告している。これらの変異が、GABA作動性伝達の効率低下を引き起こす可能性がある。

ストレスと不眠症の関連もGABA系を介している可能性がある。Vgontzas & Chrousos(2002)は、慢性ストレスによる視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)の過活動が、視索前野GABA作動性ニューロンの機能を阻害し、これが不眠症の病態基盤となることを示唆している。

他方、過眠症は日中の過剰な眠気と睡眠時間の延長を特徴とする障害群である。最もよく知られる過眠症はナルコレプシーだが、特発性過眠症や小児期発症の過眠症も臨床的に重要である。

ナルコレプシーにおけるGABA系の役割は複雑である。ナルコレプシータイプ1(カタプレキシーを伴うもの)はオレキシン系の障害が原因であることが確立されているが、Burgess & Scammell(2012)の研究は、オレキシン欠損がGABA/グルタミン酸バランスの二次的変化を引き起こすことを示した。特に、覚醒系領域において代償的GABA作動性抑制の増強が生じ、これが過度の眠気の一因となる可能性がある。

特発性過眠症においてもGABA系の異常が示唆されている。Rye et al.(2012)の研究は、特発性過眠症患者の脳脊髄液中に、GABAA受容体機能を増強するペプチド様物質が存在することを報告した。この「GABA作動性因子」が、特発性過眠症における過剰な睡眠と日中の脱力感の原因である可能性がある。

クライネ-レビン症候群(KLS)も、周期性過眠症の一種である。Dauvilliers et al.(2014)のSPECT研究は、KLS患者の過眠エピソード中に視床のGABA作動性伝達異常を示唆する所見を報告している。この異常が、視床の「ゲート」機能の障害を引き起こし、感覚情報の適切なフィルタリングを妨げている可能性がある。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)においても、GABA系の二次的変化が生じる。SASでは、断続的低酸素が前頭前皮質(PFC)のGABAニューロン損傷をもたらす可能性がある。Macey et al.(2014)のMRI研究は、SAS患者において前頭前皮質と扁桃体のGABA系に関連する構造的・機能的変化が生じることを示し、これが同障害に伴う認知・情動症状の基盤となる可能性を示唆している。

睡眠・覚醒バウンダリー障害(睡眠遊行症、睡眠時驚愕症、レム睡眠行動障害など)においても、GABA系の関与が示唆されている。Arnulf(2012)によれば、これらの障害では睡眠状態間の移行を調節するGABA作動性スイッチ機構の障害が生じている可能性がある。実際、ベンゾジアゼピン系薬がこれらの障害に対して一定の治療効果を示すことは、この仮説を支持している。

レストレスレッグス症候群(RLS)の病態にも、脊髄と視床におけるGABA系の異常が関与する可能性がある。Allen et al.(2014)の研究は、RLS患者の脊髄A11領域におけるドパミン-GABA調節の異常を示唆している。また、ドパミン作動薬の治療効果が部分的にGABA作動性伝達の正常化を介している可能性もある。

薬物療法の観点からは、睡眠障害治療におけるGABA作動薬の使用と限界も重要である。Neubauer(2014)のレビューによれば、GABA作動性睡眠薬はレム睡眠を抑制し、徐波睡眠を減少させる傾向があるため、特に記憶固定化や情動調節に関わる睡眠の機能が阻害される可能性がある。この認識が、オレキシン受容体拮抗薬などの非GABA作動性睡眠薬開発の推進力となっている。

加齢と発達による睡眠GABA系の変化

睡眠の神経機構は生涯を通じて変化し、これらの変化にはGABA系の発達的・加齢的変化が深く関与している。この時間軸に沿ったGABA系の変遷を理解することは、年齢特異的な睡眠パターンの形成と、加齢関連睡眠障害の病態解明に不可欠である。

胎児期から新生児期にかけては、GABA系の機能的特性に劇的な変化が生じる。Ben-Ari(2002)の先駆的研究によれば、発達初期においてGABAは興奮性伝達物質として機能する。これは、塩化物トランスポーターNKCC1とKCC2の発現バランスにより、細胞内塩化物濃度が高く維持されているためである。これにより、GABAA受容体活性化時に塩化物イオンが細胞外へ流出し、脱分極(興奮)を引き起こす。

このGABAの極性スイッチ(興奮性から抑制性へ)は、生後発達において重要な意味を持つ。Deidda et al.(2015)の研究は、この切り替えが正常な睡眠パターンの発達に不可欠であることを示唆している。早産児や新生児期の障害でこの極性スイッチに異常が生じると、睡眠障害や神経発達障害のリスクが増加する可能性がある。

乳幼児期の特徴的な睡眠パターン(多相性睡眠、REM睡眠優位)も、未熟なGABA系に関連している。Frank et al.(2019)によれば、生後早期には覚醒系に対するGABA作動性抑制が十分に発達しておらず、これが頻回な睡眠-覚醒移行の基盤となっている。発達に伴いGABA作動性抑制が強化されることで、睡眠が徐々に集約化(多相性から単相性へ)され、ノンレム睡眠の割合が増加する。

思春期における睡眠パターンの変化(特に睡眠位相の後退)もGABA系の発達的変化と関連している。Hagenauer et al.(2009)の研究は、思春期にSCNにおけるGABAA受容体サブユニット構成が変化し、これが概日リズムの位相調節に影響を与える可能性を示唆している。また、前頭前皮質のGABA作動性インターニューロンの成熟が、思春期の認知発達と睡眠パターン変化の両方に寄与している可能性もある。

成人期から老年期にかけては、GABA系の加齢変化が徐々に進行する。Spiegelhalder et al.(2012)のMRS研究は、健常加齢に伴い前頭前皮質と後頭皮質のGABA濃度が漸減することを示している。この減少は、加齢に伴う睡眠の質的変化(徐波睡眠の減少、睡眠の断片化増加、総睡眠時間の短縮など)と関連している可能性がある。

高齢者にみられる睡眠構造の特徴的変化には、VLPO GABA作動性ニューロンの変化が関与している。Mander et al.(2017)のレビューによれば、加齢に伴いVLPOニューロンの数と機能が低下し、これが覚醒系に対する抑制力の減弱をもたらす。この変化が、高齢者における入眠困難と睡眠維持障害の神経生物学的基盤となっている。

神経伝達物質受容体レベルでも重要な変化が生じる。特に、GABAA受容体のサブユニット構成に年齢依存的な変化が見られる。Brickley & Mody(2012)によれば、加齢に伴いα1サブユニットの減少とα5/δサブユニットの相対的増加が生じる。これらの変化は、睡眠薬への感受性変化と関連している可能性がある。

睡眠関連GABA系の加齢変化は、二次的要因によっても修飾される。慢性疾患、多剤併用、慢性炎症などは、いずれもGABA系機能に影響を与える可能性がある。Irwin et al.(2016)の研究は、加齢に伴う慢性炎症がGABA作動性ニューロンの機能を阻害し、これが睡眠障害と認知機能低下の共通基盤となる可能性を示唆している。

加齢関連神経変性疾患も睡眠GABA系に影響を与える。アルツハイマー病(AD)では、前頭前皮質と海馬のGABA作動性インターニューロンが選択的に脆弱性を示す。Wang et al.(2020)の最近の研究は、AD患者の前頭葉でGABA濃度が低下していることを示し、これが睡眠障害と記憶障害の両方に寄与する可能性を示唆している。

パーキンソン病(PD)においても、基底核と脳幹のGABA作動性回路に変化が生じる。Francia et al.(2020)の研究は、PD患者の黒質網様部と視床下部におけるGABA作動性ニューロンの変性が、レム睡眠行動障害(RBD)と関連することを示唆している。RBDは多くの場合、PD運動症状に先行して出現する前駆症状である。

環境要因も睡眠GABA系の加齢変化に影響を与える。Vance et al.(2010)の研究は、適切な身体活動と認知的刺激が加齢に伴うGABA系の機能低下を緩和し、睡眠の質を維持する効果を持つ可能性を示唆している。また、日光曝露や規則的な食事パターンも、概日リズムを介してGABA系の機能を支援する可能性がある。

栄養学的アプローチも注目される。いくつかの栄養素や食品がGABA系に影響を与え、睡眠の質を改善する可能性がある。Zhao et al.(2020)のレビューによれば、マグネシウム、ビタミンB6、トリプトファンなどがGABA合成や機能を支援し、特に高齢者の睡眠改善に有用である可能性が示唆されている。

睡眠衛生教育と認知行動療法も、加齢関連睡眠障害の非薬理学的治療として重要である。Dzierzewski et al.(2014)の研究は、これらのアプローチが高齢者の睡眠の質を改善し、睡眠薬使用を減少させる効果を持つことを示している。これらの介入がGABA系機能に及ぼす影響についての研究は、今後の重要課題である。

結論と展望:睡眠医学への翻訳的応用

睡眠の神経科学におけるGABA系の役割に関する理解は、過去数十年で飛躍的に進展した。これらの基礎的知見は、睡眠障害の診断・治療・予防に関する新たなアプローチの開発に貢献しつつある。本章の締めくくりとして、GABA系を標的とした睡眠医学の現状と将来展望について考察する。

GABAと睡眠の複雑な関係に関する理解は、従来の睡眠薬を超えた新世代の治療法開発を促している。Gotter et al.(2014)の総説によれば、従来のベンゾジアゼピン系薬やZ-drugsは自然睡眠の構造を変化させ、副作用や依存性のリスクを伴う。これに対し、オレキシン受容体拮抗薬(DORAs)は覚醒系の活動を選択的に抑制することで、より生理的な睡眠を促進する可能性がある。特にレンボレキサントは、2019年のFDA承認以降、その有効性と安全性プロファイルで注目を集めている。

GABAA受容体サブユニット選択的薬剤の開発も重要な方向性である。Atack(2011)のレビューによれば、α1選択的作動薬は催眠作用、α2/α3選択的作動薬は不安減弱効果、α5選択的作動薬は認知促進効果をそれぞれ示す。このサブユニット選択性を活用した薬剤設計により、特定の睡眠障害(入眠障害 vs 中途覚醒 vs 早朝覚醒)に対応した治療薬の開発が期待される。

脳深部刺激療法(DBS)や経頭蓋磁気刺激(TMS)などの神経調節技術も、GABA系を標的とした新しい睡眠障害治療法として注目されている。Lustenberger et al.(2013)の研究は、前頭皮質へのTMS適用が睡眠中の徐波活動を増強し、記憶固定化を促進することを示した。この効果の一部は、GABA作動性インターニューロンの調節を介している可能性がある。

光療法や時間療法などの非薬理学的介入も、概日リズムとGABA系を橋渡しする治療アプローチとして重要である。Lewy et al.(2006)の研究は、明るい光への曝露がSCNのGABA作動性出力を修飾し、メラトニン分泌と睡眠傾向の位相調節を引き起こすことを示した。これらのアプローチは、概日リズム睡眠障害(時差ぼけ、交代勤務障害など)に特に有効である。

睡眠障害の個別化医療も進展している。遺伝子多型(特にGABAA受容体サブユニット遺伝子)に基づく薬剤反応性の予測が可能になりつつある。Park et al.(2016)の研究は、GABRA2遺伝子の特定多型がベンゾジアゼピン系薬への反応性と副作用リスクに関連することを示した。このような薬理遺伝学的アプローチにより、個々の患者に最適な睡眠薬の選択が可能になるかもしれない。

バイオマーカーを用いた睡眠障害の客観的評価法も開発されつつある。Plante et al.(2012)のMRS研究は、不眠症患者における特定脳領域のGABA濃度低下を示し、これが治療反応性と関連することを示唆している。将来的には、GABA濃度の非侵襲的測定が、不眠症の診断や治療モニタリングに応用される可能性がある。

ウェアラブルデバイスを用いた睡眠モニタリングとGABA系調節の統合も期待される。Fino et al.(2020)のレビューによれば、睡眠パターンのリアルタイムモニタリングと、それに基づく時期適切な介入(光療法、音響刺激など)が、GABA作動性睡眠促進系の活動を最適化できる可能性がある。特に、徐波睡眠中の聴覚刺激が徐波活動を増強し、記憶固定化を促進することが示されている。

認知行動療法(CBT-I)などの心理療法がGABA系に及ぼす影響も研究されている。Brower et al.(2017)の研究は、CBT-Iがアルコール依存症患者の前頭前皮質GABA濃度を正常化し、これが睡眠改善と断酒維持の両方に寄与することを示した。このような知見は、薬物療法と心理療法の統合的アプローチの重要性を示唆している。

労働環境や社会政策においても、睡眠の神経科学的知見を応用する動きが広がっている。交代勤務スケジュールの最適化、学校始業時間の見直し、「睡眠負債」の概念に基づく公衆衛生的介入などが進められている。Kecklund & Axelsson(2016)の総説によれば、これらの介入は概日リズムとGABA系の相互作用に基づいており、社会全体の睡眠健康の改善に寄与する可能性がある。

未来の睡眠医学における最も有望な方向性の一つは、GABA系と他の神経系(オレキシン、ヒスタミン、セロトニンなど)の相互作用に基づく多標的アプローチである。Gotter et al.(2014)のレビューによれば、単一神経伝達物質系を標的とするアプローチは生理的睡眠の複雑性を完全に再現できない。今後は、複数の神経系を適切なバランスで調節する統合的アプローチが発展していくことが期待される。

最後に、睡眠研究の社会的意義を強調することも重要である。睡眠障害は単に不快な症状にとどまらず、心血管疾患、代謝性疾患、精神疾患、認知症などの主要な疾患リスクを増加させる。Walker(2017)の主張するように、睡眠は「健康の柱」であり、GABA系を中心とした睡眠の神経機構の理解と応用は、現代社会の多様な健康課題に対応するための基盤となるだろう。

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