朝、目が覚めて手が伸びる先はスマホだ。多くの人にとって、これはほぼ無意識の習慣だろう。私もそうだ。問題は、その時間が SNS と通知のチェックに溶けて消えていくことだ。
本記事は、その時間を 「PC 上で動かしている Claude Code 環境を、スマホでそのまま動かす」 ことで奪還する手順を共有する。
2026 年 2 月 25 日、Anthropic は公式機能 Claude Code Remote Control をリリースした。これは Claude iOS/Android アプリやブラウザから、PC で動いている Claude Code セッションを操作できる仕組みだ。だが Remote Control には PC のローカルプロセスが起動し続けている必要がある という制約があり、私のように PC を常時電源 ON にできない環境では使えない。本記事はその制約を回避し、PC オフでもスマホ単独で Claude Code が動く構成を組む。Termux + proot-distro Ubuntu + GitHub Private リポジトリで、布団の中から書いた数行が PC を起動した瞬間に同じ場所で続きから読める状態を作る。
本記事のコマンド例に登場する GitHub アカウント名・リポジトリ名・PAT などは例示用に変更/マスクしています。また、自身の作業内容のうちプライベートな部分も一般化して書いています。読者の方はご自身の環境に合わせて適宜読み替えてください。
1. なぜ朝のスマホ時間を変えたかったか
私は目覚めた瞬間にスマホへ手を伸ばす習慣を持っている。これは変える気がない。むしろ、その時間が確保されているならば、内容のほうを差し替えればいい、というのが本記事のスタンスだ。
PC は布団から 2m の距離にある。歩けばすぐだ。だが、起き上がるという行為は、思っている以上に意志力を消費する。意志力は有限の資源であり、朝の最も冴えた時間にこれを消費するのは合理的でない。可能なら、布団の中で完結する仕組みのほうが望ましい。
リモートデスクトップ(VPN 経由で PC 画面をスマホに映す方式)は一見便利に見えるが、私の環境では現実的でない。PC を常時電源 ON にしておく事情がないからだ。電源を落とした PC をスマホから起こすには Wake-on-LAN や別途のサーバが必要で、構成が肥大化する。
そこで考えたのは、「PC でやっている作業の続きを、PC が起動していなくてもスマホ単体で進められる」状態だった。これは、PC とスマホで作業環境が完全に同期していれば成立する。Gmail のドラフトのように、どちらで書いても続きから開ける、その感覚を CLI 作業に持ち込みたい。
2. Claude のラインナップ整理 — Web、Desktop、Code の違い
Anthropic が提供する Claude には、執筆時点で大きく 3 つの形態がある。混同されやすいので、ここで整理しておく。
| 形態 | 動作環境 | 主な用途 |
|---|---|---|
| Claude.ai(Web 版) | ブラウザ | カジュアルな対話・プロジェクト管理 |
| Claude Desktop アプリ | Windows / Mac ネイティブ | デスクトップで Claude.ai と同等のことをアプリで |
| Claude Code(CLI) | ターミナル | ファイル・git・ツールと連動した作業 |
Web 版と Desktop アプリは UI が違うだけで、本質的にできることは似ている。両者にはプロジェクト機能があり、ファイルをアップロードして文脈を持たせることができる。これだけでも便利だが、自分のローカルファイルシステムを直接読み書きしたり、git を操作したり、コマンドを実行したりといった統合は限定的だ。
Claude Code はターミナルで動く CLI ツールで、これらの統合がデフォルトで揃っている。さらに:
CLAUDE.md:プロジェクトディレクトリにこのファイルを置くだけで、Claude が起動時に読み込み、自分用のカスタム指示・人格設定として使える- スキル:作業ルールを Markdown でまとめ、
.claude/skills/以下に階層化して蓄積できる - メモリ:セッションをまたいで知識・嗜好を蓄積できる(Auto Memory は v2.1.59 以降、自動でも蓄積)
- コマンド:自前のスラッシュコマンドを定義し、定型作業を自動化できる
これらは Web/Desktop では得られない。私の作業はすでに Claude Code の上で組み上がっており、Claude Code でなければ続きの作業にならない状態だ。
つまり、朝のスマホからこの環境にアクセスする必要がある。後述する Remote Control を使えば PC で起動中の Claude Code をスマホから操作できるが、PC を起動しない時間帯にスマホ単独で Claude Code 環境を立ち上げる公式手段は存在しない。これが本記事の出発点だ。
3. Claude Code Remote Control という選択肢の存在
ここまで読んで、「PC で動く Claude Code をスマホから操作する公式の方法は他にないのか」と思う読者もいるはずだ。実は 2026 年 2 月 25 日、Anthropic は Claude Code Remote Control をリリースしている。これは Claude Code v2.1.51 以降に組み込まれた公式機能で、claude remote-control(または /rc)を実行すると URL と QR コードが発行され、別デバイス(スマホ・タブレット・ブラウザ)でその URL を開けば同じセッションに接続できる。Pro / Max / Team / Enterprise の全プランで利用可能(Team / Enterprise は管理者によるトグル有効化が必要、API キー認証は非対応)。設定の手軽さは本記事の方式の比ではない。
それなら本記事の方式は不要なのか。結論を先に言うと、Remote Control と本記事の方式は前提が決定的に違うため、用途が住み分けられる。
3.1 Remote Control の決定的な前提
公式ドキュメントは次の制約を明示している:
Local process must keep running: Remote Control runs as a local process. If you close the terminal, quit VS Code, or otherwise stop the
claudeprocess, the session ends.
加えて、マシンがネットワークに繋がらない時間が約 10 分続くとセッションがタイムアウトして消える。つまり Remote Control は「PC を起動させ続け、ネットワークにも繋ぎ続けている」前提で設計されている。
これを章 1 で述べた動機に照らすと、私の環境はこれを満たさない。私の PC は事情により常時電源 ON にできない。「PC を起動して Remote Control を立ち上げてからスマホで操作」という手順は、布団から PC まで 2m を歩く意志力の問題に逆戻りする。
3.2 両者の用途を整理する
| 観点 | 本記事の方式(Termux + proot-distro Ubuntu) | Claude Code Remote Control |
|---|---|---|
| PC が必要か | 不要(スマホ単独で動作) | 必須(ローカルプロセス起動中) |
| PC が電源 OFF / スリープでも使えるか | 使える | 使えない(約 10 分でセッション終了) |
| 必要なプラン | Pro 以上(Claude Code 通常と同じ) | Pro / Max / Team / Enterprise(API キー不可) |
| 設定の手間 | 高(Termux + proot-distro + GitHub) | 低(claude remote-control 一発) |
| データ同期方式 | GitHub Private 経由(明示的 push / pull) | リアルタイム(PC のローカルファイルに直接アクセス) |
| セッション継続 | 各デバイス独立。前の内容は git ログから再構築 | 同じセッションをリアルタイム継続 |
| MCP サーバ・ローカルツール | スマホ側で別途用意 | PC 側のローカル環境がそのまま使える |
| 適した用途 | PC 不在でもスマホ単独で完結したい | PC で始めた作業を別デバイスから継続したい |
3.3 どちらを選ぶか
Remote Control が向いているのは:
- PC を常時起動させていて、外出先や別の部屋から「PC で進行中のタスクをスマホから操作」したい
- 同じセッションのリアルタイム継続が欲しい
- 設定はほぼゼロで済ませたい
- PC 側のローカル MCP サーバや特殊なツールチェーンを活用したい
本記事の方式が向いているのは:
- PC を起動していない状態でも、スマホ単独で作業環境を立ち上げたい
- 私のように PC を電源 OFF にしている時間が長い
- PC を持たずに外出している時間が長い
- 朝の布団内から PC を起動せずに使い始めたい
両者は対立する選択肢ではない。Remote Control と本記事の方式は併用できる。PC 起動時間帯の連続作業は Remote Control で、PC オフ時間帯のスマホ単独作業は本記事の方式で、と使い分けられる。本記事は 「PC オフでもスマホで動く Claude Code 環境を持つ」という用途に特化していることを、ここで明確にしておく。
なお、Anthropic は 2026 年 4 月に一時的に Pro プランから Claude Code を除外する変更をテストしたが、翌日に撤回している。執筆時点では Pro プラン(月額 20 USD)で Claude Code を利用できるが、将来的にプラン構成が変わる可能性は念頭に置いておきたい。
4. 採用した構成
最終的に採用したのは、以下の組み合わせだ:
[Android 端末]
└── Termux(Android 用ターミナルエミュレータ)
└── proot-distro
└── Ubuntu 環境
└── Node.js + Claude Code
└── GitHub Private リポジトリ(PC と共有)
ポイントは 2 段階の入れ子になっていること:
- Termux:Android 上で動くターミナルエミュレータ。素の状態でも
bashやgitなどは動くが、後述の理由で Claude Code 本体は動かない。 - proot-distro Ubuntu:Termux の中に「Ubuntu の擬似環境」を立ち上げる仕組み。ここでは glibc が使える。Claude Code 本体はこの Ubuntu の中にインストールする。
PC とスマホの同期は GitHub の Private リポジトリを介して行う。CLAUDE.md、スキル、メモリ、原稿類をすべてこのリポジトリに入れ、双方で git pull / git push するだけで環境が一致する。Gmail のドラフトに近い感覚だ。
5. セットアップ手順
5.1 Termux のインストール(罠注意)
Termux は F-Droid または GitHub Releases から入手するのが推奨だ。Google Play 版も 2024 年 6 月に Termux 開発者の手で再開されているが、別コードベースで構築されており、機能面では F-Droid / GitHub 版より大きく遅れた状態にある。Termux 公式も F-Droid または GitHub からのインストールを推奨している。
F-Droid で「Termux」と検索すると、公式 Termux に酷似した別パッケージが複数表示されることがある。アイコンも似ているため判別がつきにくい。パッケージ名が com.termux、開発者が Fredrik Fornwall であることを必ず確認する。
確実なのは GitHub Releases から最新の APK を直接ダウンロードする方法:
https://github.com/termux/termux-app/releases
私自身は termux-app_v0.119.0-beta.x+apt-android-7-github-debug_universal.apk 系のベータ版を使って動作確認している。Android 7 以降が対象。なお、本記事執筆時点で公式の最新安定版は v0.118.3 であり、慎重を期す読者はそちらを選んでも本記事の手順に支障はない。
加えて、ホーム画面ショートカット用に Termux:Widget も入れておく:
https://f-droid.org/packages/com.termux.widget/
5.2 Termux の初期設定
Termux を起動すると、Linux のターミナルらしいプロンプト(~ $)が表示される。まずパッケージを更新する:
pkg update && pkg upgrade -y
5.3 proot-distro と Ubuntu のインストール
ここで重要な分岐がある。Claude Code を素の Termux に直接 npm install してはいけない。理由は次章「ハマりどころ集」で詳述するが、結論だけ言うと、Claude Code の v2.1.113 以降は glibc にリンクされたネイティブバイナリを使っており、Android の Bionic libc では動かない。
そこで、proot-distro 経由で Ubuntu 環境を立ち上げる:
pkg install -y proot-distro
proot-distro install ubuntu
proot-distro login ubuntu
login するとプロンプトが root@localhost:~# のように変わる。ここからは Ubuntu の中だ。
Ubuntu 内で Node.js とその他の必要パッケージをインストール:
apt update && apt upgrade -y
apt install -y nodejs npm git curl
Node.js のバージョンを確認:
node --version
v20.x 以上であればよい。
5.4 Claude Code のインストール
npm install -g @anthropic-ai/claude-code
claude --version
2.1.x のような表示が出れば成功。
5.5 認証
claude
初回起動時に Anthropic アカウントへのログインフローが走る。表示される URL を端末ブラウザで開き、認証コードを入力する。Claude Pro / Max プランの契約済みアカウントが必要だ。本記事の構成は 私自身が Pro プランで運用して動作確認したもので、執筆時点では Pro プラン(月額 20 USD)で十分に機能している。
5.6 GitHub Private リポジトリの準備
PC 側であらかじめ、自分の作業ディレクトリを GitHub Private リポジトリ化しておく。CLAUDE.md、.claude/、その他の素材をすべてコミット。リポジトリ名は仮に my-claude-env としておく:
https://github.com/your-username/my-claude-env
5.7 Personal Access Token (PAT) の発行
GitHub の Settings → Developer settings → Personal access tokens (classic) で新規発行:
- スコープ:
repo(Private リポジトリへのアクセス権) - 期限:90 日(私はこれにした。
No expirationは紛失時のリスクが大きいので避ける) - 名前:
termux-mobileなどわかりやすいものに
発行画面に表示されるトークン(ghp_xxxxxxxx...)はその場でコピー。一度画面を閉じると二度と表示されないので、パスワードマネージャに保存しておく。
※ 後から知った補足:私は手早く済ませたかったので classic トークン(
ghp_で始まるもの)のrepoスコープで発行してしまったが、これは 自分のアカウントが触れる全リポジトリへのフルアクセス権を持つため、漏洩時の影響範囲が大きい。後で調べたところ、GitHub は現在 fine-grained personal access tokens(github_pat_で始まるもの)を推奨しており、本ユースケース(自分の単一 Private リポジトリへの読み書き)であれば、対象をmy-claude-env一つに絞り、権限もContents: Read and write+Metadata: Read-onlyだけに絞ったほうが安全だった。fine-grained は最長 366 日まで期限が設定可能。次回 PAT を更新するタイミングで fine-grained に切り替える予定だ。読者の方が新規発行する場合は最初から fine-grained を選ぶことをおすすめする。
5.8 補足:スマホへの PAT・コマンドの渡し方
PC で発行した PAT を、どうスマホの Termux に貼り付けるか。これは意外と地味な課題だ。スマホのソフトキーボードで ghp_xxxxxxxxxx... のような長い文字列を手打ちするのは現実的でない。
私が試した方法と、そのトレードオフ:
| 方法 | 利便性 | セキュリティ |
|---|---|---|
| PC ターミナルを見ながらスマホで手打ち | 低 | 高(端末外に出ない) |
| Gmail の下書きに PC で書き、スマホ Gmail で開いてコピー | 高 | 中(クラウドに残るので使用後の削除が必須) |
| クラウド同期メモ帳(Google Keep 等) | 高 | 中(同上) |
| ローカル専用メモ帳 | 中 | 中〜高(端末紛失時のリスクは残る) |
| パスワードマネージャ(Bitwarden、1Password 等) | 高 | 高(本来こうあるべき) |
「Gmail 下書き経由」は一番手軽だ。ただし、送信していなくても下書きは Google サーバに同期される点は理解しておきたい。一度きりの作業であれば、使用後に下書きを完全削除(ゴミ箱からも消す)すれば現実的なリスクは小さい。だが、繰り返し使う場合や長期保管には推奨できない。中長期的には、スマホ側の パスワードマネージャ(Bitwarden、1Password 等)に PAT を保存するほうが筋がいい。
クラウド同期メモ帳(Google Keep 等)も Gmail 下書きと本質的に同じだ。ローカル専用メモ帳は端末内で完結する分だけ漏洩面では Gmail よりわずかに優位だが、端末紛失時のリスクは残る。
5.9 リポジトリの clone
スマホの Ubuntu 環境で:
git config --global user.name "your-name"
git config --global user.email "your-email@example.com"
git config --global credential.helper store
git clone https://github.com/your-username/my-claude-env.git
cd my-claude-env
clone 時にユーザー名と「パスワード」(実際は PAT を貼る)を聞かれる。credential.helper store を有効にしているので、初回のみ入力すればよく、次回以降は自動。
5.10 Claude Code の起動
claude
このコマンドを cd my-claude-env した状態で実行すると、CLAUDE.md を読み込んだ状態で起動する。PC で日常使っている環境が、スマホでそのまま動く。
ここまでで朝の運用は始められる。proot-distro login ubuntu → cd my-claude-env → git pull → claude を毎朝叩くだけで、PC と同じ環境が立ち上がる。残るのは 「毎朝のコマンド入力すら不要にする」最後の一手 — Termux:Widget によるホーム画面 1 タップ起動の設定だが、これは別途、続編記事でまとめて取り上げる。
6. ハマりどころ集
6.1 F-Droid の偽 Termux
F-Droid で「Termux」を検索すると、公式以外の似た名前のパッケージが複数表示される。中には 公式と同じアイコンを使っているものもあり、判別が困難。パッケージ名 com.termux、開発者 Fredrik Fornwall を必ず確認する。確実なのは GitHub Releases からの直接ダウンロードだ。
6.2 Claude Code v2.1.113 以降の glibc 問題
素の Termux に npm install -g @anthropic-ai/claude-code でインストールしたあとに claude を起動すると、次のエラーが出る:
Error: claude native binary not installed.
Either postinstall did not run (--ignore-scripts, some pnpm configs)
or the platform-native optional dependency was not downloaded (--omit=optional).
エラーメッセージは「postinstall を手で走らせろ」と示唆しているが、これは表面的な原因で、根本は別にある。Claude Code v2.1.113 以降はネイティブバイナリを glibc にリンクしており、Android の Bionic libc では実行できない。npm がインストールするバイナリそのものがプラットフォーム互換性を欠いている。
これは Anthropic 公式の GitHub Issue(#50270)でも追跡されている既知の問題だ。解決策は本記事で採用した proot-distro Ubuntu 経由のみ。glibc が使える環境を Android 上に擬似的に立ち上げてしまえばよい。
6.3 credential.helper のタイポ
集中力が落ちた深夜の作業では、こうした単純な綴り間違いが起きやすい。私はこのタイプの取りこぼしで認証エラーに何度も阻まれたので共有しておく:
# よくあるタイポ
git config --global credential.heper store
# 正しい
git config --global credential.helper store
heper で設定してしまうと、後の git push 時に PAT が保存されず、毎回入力を要求される。設定確認:
git config --global --list | grep credential
credential.helper=store と表示されていれば OK。タイポしている場合は:
git config --global --unset credential.heper
git config --global credential.helper store
6.4 Claude Code 内から git push しようとして失敗する罠
これは少し非自明な落とし穴だ。Claude Code を起動した状態で内部から git push を実行させると、対話プロンプト(Username for 'https://github.com':)が開かず、認証エラーになる:
fatal: could not read Username for 'https://github.com': No such device or address
理由は、Claude Code が内部で実行する Bash には TTY が紐づいていないため。git push は対話プロンプトを開くために TTY を要求するが、それが無いので失敗する。
回避策は 2 通り:
A. Claude Code を一度終了してシェル側で push する
# Claude Code 内で /quit
# Ubuntu のシェルに戻る
git push
# Username と PAT を入力
B. ~/.git-credentials を直接書く
echo "https://your-username:ghp_xxxxxxxx@github.com" > ~/.git-credentials
chmod 600 ~/.git-credentials
git push # 以降は自動認証
A が安全で、初回のみで済む。credential.helper store が有効ならば、A で一度成功させた時点で ~/.git-credentials に保存されるため、次回以降の git push は自動になる。
6.5 日本語入力の限界
Termux のキーボード(特に Hacker’s Keyboard 系)は日本語入力に弱い。標準の Gboard を使う場合も、Termux のターミナル上では日本語 IME がうまく動作しないことがある。
実用上の回避策:
- 入力は英語、応答は日本語で受ける(指示は英語ベースで書く)
- 音声入力を併用する
- 別アプリで日本語を打ち、コピー&貼付する
スマホでの作業はあくまで「短い往復」を想定し、長文入力は PC に任せる、という割り切りが現実的だ。
7. 同期の検証
セットアップが完了したら、実際に PC ⇔ スマホで同じ環境が見えているかを確認する。これがこの記事のゴールだ。
スマホで Claude Code を起動して、適当なファイル(例:memory.md)に 1 行追記する。以下は実際に私が書いて push した行をそのまま載せる:
2026-04-30:スマホ(Termux Ubuntu proot)からの初接続成功。Opus 4.7 + xhigh が連動動作確認済み
注:末尾の「Opus 4.7 + xhigh」は、私が Claude Code の設定をデフォルトから変更した結果(モデルを
claude-opus-4-7、思考レベル effort をxhighに固定)の動作確認メモ。これらは~/.claude/settings.jsonのmodelおよびeffortLevelキー、または環境変数ANTHROPIC_MODEL/CLAUDE_CODE_EFFORT_LEVELで指定でき、本構成では PC とスマホで同じ設定が GitHub 同期によって揃うため、変更したまま運用しても問題ない。なお v2.1.117 以降、Opus 4.7 のデフォルト effort はそもそもxhighなので、明示設定は冗長な確認の意味合いが強い。
そして commit & push(6.4 の方法 A で)。
PC 側で:
git pull
Updating ... Fast-forward の表示と共に、スマホで書いた 1 行が反映される。これで成立。
「布団の中で書いたメモが、PC を起動した瞬間に同じ場所で続きから読める」状態が、実際に動いていることが確認できる。
8. まとめ — 意志力ではなく仕組みで習慣を作る
朝のスマホ習慣を「変える」のではなく、その時間の中身を差し替える。これが本記事の発想の中心だった。
得られたもの:
- PC を起動せずにクリエイティブな作業を始められる:布団から 2m を歩く意志力を温存できる
- PC とスマホで完全に同じ環境:Gmail のドラフト感覚で続きから開ける
- Web/Desktop では実現できない、Claude Code 固有の環境を朝のスマホで使える
- Remote Control が前提とする「PC 常時起動」を満たさなくても運用できる:本記事方式の核心的な強み
意志力は有限の資源だ。一日のうち最も冴えた朝の時間を、「起き上がるかどうか」の判断に消費するのは合理的でない。技術で意志力を使わない仕組みを組めば、習慣は仕組みに支えられて勝手に維持される。
応用範囲は広い。本記事は Claude Code を例にしたが、「PC で動くツールをスマホでも使いたい」という課題に対して、Termux + proot-distro Ubuntu の組み合わせは多くの場合有効だ。glibc が必要なツール、git ベースの作業環境、CLI 中心のワークフロー — これらを朝の数分の入口にしたい人に、本構成は推奨できる。
朝起きてスマホに手を伸ばすのは、もう変えなくていい。ただ、その手の中で開かれるものを、自分で選び直すことはできる。
関連記事(続編予定):朝の起動コストをゼロに削る — Termux:Widget でホーム画面 1 タップ起動を設定する